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■19:ALANE[飛行機] ページ19

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 出発の時間となり、空港へと向かう。
 空港へと続く道をテンプレート通りになぞっていく車内で、承太郎が後ろから助手席に乗った俺に話し掛けてきた。

「ばあちゃんはどうすんだ? …そもそも、旅自体許してもらえたのか?」
「『行くと決めたならやり遂げて帰ってこい』だと。ったく、掴めないばあちゃんだよ。あの様子じゃ200までくたばんねえーな」

 ふ、と小さく笑みを溢しながらそう言う。鏡越しに見えたのか、俺の笑顔を見た承太郎は目を見開く。笑ったの内に入るのか、というレベルの小さなものだったが、それでも俺のいつもの仏頂面とは全く違うのだろう。

 ばあちゃんは俺を止めなかった。寧ろ、後ろ髪引かれる俺の顔を前に向かせ、その背中を思い切り外へ押し出す勢いだった。その姿は心なしかいつもより若々しく見えて、大きな存在にも思えた。シワだらけの血管が浮き出たその手のひらに、俺は押されて本当に旅に出ると決心したのだ。
 同じ緑色の瞳の色に、一種の闘志を感じた。だからこうして俺は心配の欠片もなくここにいる。


「飛行機、初めてだ…。広いんだな、飛行機の中って」
「初めて? 意外だな」
「貧乏人がそう飛行機に乗れるなんて思うなよ、典明」

 今思うが、よく金属検査を承太郎が通れたなと思う。鎖なんて凶器になりかねない。そう言うと、承太郎はフンと反対側を向いた。「ま、俺はズルしたけどな」そう言って俺は鞄の中から十徳ナイフを出して見せた。すると承太郎は怪訝そうな顔をする。

「俺のスタンド能力なら金属持ち込むなんて簡単(イージー)だぜ」

 そう言いながらナイフを一本出すと、CAさんが横を通ったので急いで隠す。何でもないような顔で「危なかった」と言って見せると、承太郎は溜め息を吐いた。



 成田空港から空へと飛び立った飛行機は、東中国海上空を当然の様に通っていく。時刻は午後10時を回り、飛行機内は無数の寝息だけが飛び交う。俺もその寝息を立てる人間で例外ではなかった。しかしその睡眠は、鬱陶しい低音によって阻まれた。
 不機嫌に眉間にシワを寄せながら目を開ける。

 その眠気が残る掠れた視界の端に写る物体。羽根を高速で上下させる音に、子供の頃誰もが追い掛けたその特徴的な風貌。

「か…かぶと…、いや…クワガタ虫だっ!」

 不意に、兄とクワガタを追い掛けた小学校の夏休みが頭を過った。クワガタを解剖して不気味がられたのを覚えている。しかしそのクワガタとは訳が違うようで。

■20:STAG BEETLE[クワガタ虫]→←■18:NAME[名前]



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カレーライス(プロフ) - 鼎さん» ありがとうございます! そう言ってくださると、モチベーションが上がって書くのが楽しくなります! これからもよろしくお願いします! (2019年11月26日 21時) (レス) id: 62819c8559 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すっごい面白いです…一気読みしてしまいました…!更新はご自分のペースで無理をなさらない程度に頑張ってください...!ずっと応援してます! (2019年11月25日 7時) (レス) id: 7b1eca840c (このIDを非表示/違反報告)
カレーライス(プロフ) - ASTEさん» ありがとうございます! 頑張ります! (2019年8月16日 12時) (レス) id: 62819c8559 (このIDを非表示/違反報告)
ASTE(プロフ) - めっちゃ好きです!!!更新頑張ってください!!! (2019年8月15日 19時) (レス) id: 2389d4e467 (このIDを非表示/違反報告)
カレーライス(プロフ) - ツティスさん» 感想を言って頂けて嬉しいです。これからも、龍兎たちをどうぞよろしくお願い致します! (2019年8月10日 16時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カレーライス | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年8月9日 10時

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