第八章 ページ27
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その日私は、意を決して列車へと乗り込んだ。
この列車には杏寿郎が先に乗っている。
キョロキョロと周りを見回しながら列車の中を進んでいくと、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
座席から目立つ髪色が見える。
「煉獄さん」
「うまい!」
「煉獄さん」
「うまい!」
「煉獄さん、口の周りにご飯粒がついていますよ」
「む、すまない………雪園ではないか!!」
口元のご飯粒を取ると、杏寿郎はようやく私に気付いたようだった。
前からご飯を食べてるときは話しかけても「うまい!」しか言わなかったからなぁ、杏寿郎は。
今も変わっていないんだな、と笑みを零す。
「まだ何かついているのか!」
「いえ、もうついていませんよ…お隣、座ってもよろしいでしょうか?」
そう小さく首を傾げれば、杏寿郎は「構わない!」と首を大きく縦に振った。
その言葉を聞いて、静かに彼の隣に腰を下ろす。
本当に嬉しそうに食べ物を食べているなぁ。
出発までの間、そんなことを考えながら牛鍋弁当を食べる杏寿郎の顔を眺める。
「……一口欲しいのか?」
「え?」
パチリと目が合った瞬間にそう言われ、思わずそんな声を漏らした。
そういう訳では……と言う前に、口の前に箸が伸びてくる。
「遠慮するな!」
「うぐ!」
小さく開いた口にお肉とご飯を突っ込まれた。
喉に詰まりそうになり、慌てて瓢箪を取り出しお茶を飲む。
「美味かったか!」
「はい…」
正直、味なんてよくわからなかった。
小さくため息を零しつつ杏寿郎を見ると、既に牛鍋弁当を食べるのを再開していた。
私の口に入った箸が、杏寿郎の口の中へ…
何故かそれが変に気になってきて、頬が熱くなった。
よくわからないけれど、恥ずかしい。
手で頬を包み熱を冷ます。
はぁ、急にどうしてしまったのだろうか。
そんなことを考えながら暫くそのままでいると、不意に後ろから覚えのある気配が近付いてきた。
「煉獄さん……Aさん!?」
「竈門くん?」
「うまい!うまい!」
「え?なに?Aさん!?嘘、これって運命ですか!?」
「おい!俺と勝負しろ!」
なんとも言えないこの状況で、私は密かに驚いていた。
彼らも、この任務に来ていたの…?
では、杏寿郎が死んだときもいたということ?
だんだんと、杏寿郎が死んだ今日の事が明かされていく。
それが少しだけ、恐ろしく感じた。
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フェイタン - すーーーっごくよかったです!!(泣) ありがとうございましたーー!!!! (2019年12月7日 23時) (レス) id: 45eedb7288 (このIDを非表示/違反報告)
煉獄さんの嫁になりたい(プロフ) - どうしてくれるんですか……バスタオルがびしょ濡れなんですけど!私を脱水症状にさせる気ですか!最高でした有難うございます! (2019年11月13日 16時) (レス) id: 60ba35ccc3 (このIDを非表示/違反報告)
リズ(プロフ) - 凄く面白かったです!ありがとうございます!他作品も頑張って下さい! (2019年11月3日 19時) (レス) id: 96dd58bc45 (このIDを非表示/違反報告)
みーた(プロフ) - 眞孤さん» コメントありがとうございます!私も師匠大好きなのでとっても嬉しいです! (2019年10月29日 19時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
眞孤(プロフ) - 今日見つけて一気に読んでしまいました…!とっても面白かったです!特に師匠が好きでした…オリジナルで書けるなんてすごいです!( ´艸`)とっても素敵な作品をありがとうございました! (2019年10月28日 2時) (レス) id: 38cda14dee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みーた x他1人 | 作成日時:2019年10月12日 13時