とある話 8 ページ10
『な、んでこんな』
大天狗「旦那様の演技などすぐにわかったわ。
けどな、良い機会だと思ったんだ」
頭を鷲掴みにされ、持ち上げられた。
息が苦しくなり、ぼーっとし始めた頃手を離された。
『ゲホッ、カッ…、』
大天狗「…旦那様から離れるんだ」
羽根から足を離すと大天狗は石階段に腰掛けた。
大天狗「近い未来で、お前は死ぬと」
『…は』
大天狗「…奥様を見つけたら、お前は死ぬんだと」
悔しそうに、悲しそうに涙を流した。
大切な方を探し出せば、息子は死んでしまうから。
どちらを優先すべきか、大天狗の選択は当然息子を取った。
唯一の血の繋がりのもつ倅だから。大切な子供だから。
自身の跡を継がず旦那様たちの元で暮らすと若いのにも関わらずしっかりと考え、大きな決断をした、立派な息子だから。
大天狗「儂は、悔しい…」
『げほっ、…はぁ、
……親子水入らず、話しましょうか』
起き上がり、父親の目の前に座ると近くにいた鴉天狗を手招きし呼び出した。
『酒の用意を』
鴉天狗「こちらに」
すでに用意してあったのか、お盆の上に置いてあった酒瓶を取りコップに注ぎ入れた。
『父さん、俺はね
旦那様と奥様の為に死ねる覚悟を持ってます
それは、貴方に怒られても変えるつもりはありません』
大天狗「……、だが、お前は俺の」
酒がたんまりと入ったコップを目の前に差し出すと大天狗はそれを受け取ると一気に飲み干した。
『大事な、子供。
わかってます。
俺のことが可愛いのも、大事なのも。
父さんが俺を穴蔵に封印してでも大事だってことは』
大天狗「ならば！」
『でもね、父さん。
俺、出逢っちゃったんです。
父さんよりも大事な方たちに。
今まで生きてきた中で、この身全て捧げてもいいと思った。
そんな方に父さんは出逢ったことある？』
大天狗「…ない、」
『父さん、俺ね。
俺、未来予知は信じないようにしてるんだ。
未来なんか、簡単に変えられるから。
だから、待ってて。
未来なんか、ぱっ。って変えて何事もなかったかのように帰ってくる俺の姿をね。
だって俺、奥様と旦那様の稚児すらも俺は守るって約束したんだから』
そう、だから。
邪魔しないで。
父親だろうが、なんだろうが。
俺の行く道を邪魔しないでくれ。
そんなことを思いながら、にんまりと笑う俺の顔を見て父親はまた酒を飲み干した。
酒を大量に飲ませ、よっぱらせた状態で父親を鴉天狗達に任せ旦那様が待つ温泉へと向かった。
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わーい - ひあのさん» 返信遅くなり誠に申し訳ありません。ありがとうございます！早く完結できるよう頑張ります！ (12月13日 8時) (
レス) id: caa96760da (このIDを非表示/違反報告)
ひあの(プロフ) - めっちゃめっちゃ面白いです！！更新楽しみにしています！！！！ (12月8日 7時) (レス) @page4 id: 426f9a3d0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わーい | 作成日時：2023年12月7日 8時
