とある話 7 ページ9
そう言って自分の袖を持ち嘘泣きを拭き取る仕草をしたゲゲ郎の姿を見て大天狗は大暴れしてしまった。
かの最強の、絶滅寸前の幽霊族のお方を泣かせてしまった。
あの鴉天狗の頂点に立つ男の倅が泣かせた。
そんな噂が立ってしまえば鴉天狗の地位は落ちる。
そんな事はあってはいけない。
そんな意志を持ちながら大天狗は自慢の天狗の団扇を取り出し強風を建物の中で巻き起こした。
『だ、旦那様ぁああああ!!!!』
ゲゲ郎「だ、大天狗よ!落ち着くんじゃ!!
じ、冗談や!冗談!泣いたらんし、わしからAに聞いたんじゃ!!こ、壊れてしまうぞ!!」
大天狗「表出ろや倅ぇええあ!!」
鴉天狗「旦那様はこちらへ」
風だけで扉に叩きつけられ外に出された。
強風だけで人型の術を解かれた。
他の鴉天狗よりも大きな翼を広げ空中を漂っていた。
あの強風に旦那様は巻き込まれてはおらぬか。
それだけが心配だった。
ふと視野の中に何かが動いた気がして視線をそちらに向けた。
そこにいたのは建物から連れ去られどこかにむかっていた旦那様の姿。
着流しも汚れておらず、体に傷ひとつつかず逃れられた旦那様と目が合った。
何やら申し訳なさそうに私めの方を見ていた気がした。
ああ、そんな哀れみの瞳を私め如きに向けないでください。
こんな使えない鴉天狗、他に代わりはいるのですから。
旦那様、嗚呼旦那様…
貴方様がご無事で何よりでございます。
その瞬間、自分でも飛び続ける事が困難な強風が吹き荒れ石階段へと叩きつけられ。
心配そうに見つめ、岩陰に隠れている鴉天狗達。
そして石階段をゆっくりと降りてきた父親に対抗すべく立ちあがろうとするが全身思い切り叩きつけられた体は異常な痛みのせいで起き上がることもできなかった。
『ぐ…ぅ、う』
バサバサと翼を羽ばたかせたが巨大な足に踏まれ身動きが取れなくなってしまった。
翼は、時によって弱点になる。
その言葉を今一度知らしめられた。
179人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わーい - ひあのさん» 返信遅くなり誠に申し訳ありません。ありがとうございます!早く完結できるよう頑張ります! (12月13日 8時) (レス) id: caa96760da (このIDを非表示/違反報告)
ひあの(プロフ) - めっちゃめっちゃ面白いです!!更新楽しみにしています!!!! (12月8日 7時) (レス) @page4 id: 426f9a3d0f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:わーい | 作成日時:2023年12月7日 8時