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とある罪の話 ページ43

「 A 、起きてる?
まったく、貴方ってば無茶ばかりするから閻魔様に頼んで少しだけ戻ってきたのよ もう、養ってくれるのは嬉しいけれども、私もあの人も貴方が傷ついてほしくないと思っているのよ? みんな健康第一じゃない! 」

「 ねぇ… A 、私ね
貴方に護られて、あの日々過ごせてとても幸せだったのよ 」

動かせぬ体、出せぬ声、開けられぬ瞳。
開けなくともわかる、この声の波長、質、音の高さ
声真似ができるほど聞き尽くし、真似をした
私めが護らなければいけなかった奥様の声。

もうすでに亡くなってしまっているのに、そばにいるとはっきりとわかる奥様の妖気の質。

撒き餌を必死にもらう鯉のように口をぱくぱくと開き、閉じる仕草を必死にするが、声も出ず触れることもできず、ただただまどろっこしい時間だけが過ぎていく。
目も開けることもできず、直接謝ることもできず、何も言葉にできぬままに流れ落ち布団を濡らす涙。

「 ねぇ、A。
まだ、貴方の名前呼んだら来てくれる?
私の呼ぶ声、忘れないでよ?
私は貴方のことも、あの人のことも、鬼太郎のことも
助けてくれた水木さんのことも 私は、 」

昔のように髪の毛に触れ小さき子供を慰めるように撫でてくれた。

いつでも立ち上がれるよう脳に信号を送り続けていると体が自然と楽になりいつもよりも俊敏に動けたが、もうその場に奥様の姿はなく、ただただ傷ついていた体だけが治っていた。

濡れた布団、汗ばんでいる体、痛まない全身、確かにここにいたはずの奥様
そのはずなのに、

謝罪もさせてくれなかった。

何一つ謝らせてくれたかった。

貴方様を護ることも、今この世に生存させられなかったことも、稚児を抱きしめさせることもできなかった
俺は、何もできなかった。

それなのに、こんな鴉天狗なのに
奥様は愛している。と言ってくれた。
みんなを愛していると

布団に四つん這いになり、湿っている布団を握りしめるとびりっ、と布が引きちぎれる音が聞こえた。
唇を噛み締め、声を上げないように泣き出した。
布団に頭を擦り付けながら、自らが犯したミスを、罪を後悔した。

『っ…、ぁ……ぁあ゛ああ…っ゛!!』

奥様、

嗚呼奥様。

私めは、忘れませぬ。
私めは、忘れなどしません
貴方様の可憐な御姿、声、仕草、全てを
私めは忘れませぬ…
死ぬまで、いえ死んでも奥様や旦那様、御子息様に水木様の事全て、忘れませぬ

これは私めが背負わなければいけないーーー罪ですから

とある鴉天狗の話→←あとがき



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わーい - ひあのさん» 返信遅くなり誠に申し訳ありません。ありがとうございます!早く完結できるよう頑張ります! (12月13日 8時) (レス) id: caa96760da (このIDを非表示/違反報告)
ひあの(プロフ) - めっちゃめっちゃ面白いです!!更新楽しみにしています!!!! (12月8日 7時) (レス) @page4 id: 426f9a3d0f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わーい | 作成日時:2023年12月7日 8時

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