とある の話 02 ページ41
鼻血が、ぽたぽたっ、とボートに落ち、赤く染めると何かが胸から飛び出ていた。
そんなことに驚きもせず、ただただ目の前の男に助けを求める視線だけを向けた。
『 はい、承知 』
オールが錫杖に変化するとそのまま水木の体を貫いた。
水木の体を貫いた。と言っても正確には水木の体の中にいた狂骨を貫いた。
錫杖を引き抜くと返がついているのか、狂骨は逃げられず錫杖に貫かれたまま逃げようと体を捩っていた。
いつのまにか手に持っていた札を貼り付けると、狂骨は光り輝きその場からいなくなった。
ヒラヒラと落ちた札を掴むと着流しの中にしまうと、またボートに何事もなかったかのように座った。
『あ、鼻血また出てますよ。
これも加護で治せばよかったのに』
そう言って袖を伸ばし鼻血を拭き取るとその腕を掴まれた。
『ん？』
水木「ぁ……、そ、の……俺…、
俺……」
ポロポロと急に涙を流し始めた。
またなんかくだらないこと考えてるんだろうな。そう思いながら水木の横に座り肩を叩いた。
『言いたいこと、たくさんあるだろうけど…
俺から言えるのは、別に記憶失ってたことに対してはなんとも思ってないことと、記憶失ってる時に言った言葉も
なんとも思ってないってことぐらいかな。』
水木「っ…！うっ…、くっ…、」
『ああ、ほら泣いちゃダメです。
せっかく再会できたのに泣かれるのは嫌ですよ。
せめて笑ってください。それなら俺も嬉しいし！』
そう言われ、握られた手は死人のように冷たかった。
昔、あの村で触れられた時はもう少し暖かかった。
これじゃあ、まるで、その体温は…
目を見開きながらAの方を向いたが何も語ろうとせず、ただただ目を細め笑った。
『まだ、というか
言えないよ』
そう言うと錫杖をまたオールに戻すと立ち上がり先ほどと同様にボートを漕ぎ始めた。
『これから、俺の上司達に会うから。
あまり粗相の無いように…というか、そんなことしないか』
水木「ま、ってくれ。
ここって、本当に」
辺りを見渡せば見渡すほど、ここは異界。
さっきの狂骨といい幽霊といいここは、
そう思いながら勝手に吐き出る汗を袖で拭うとAは少し驚いた表情を浮かべながら淡々と答えた。
『え？今更？
と言うか案内してなかったね…
そうだよ、ここは』
とある 地獄 の話 完
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わーい - ひあのさん» 返信遅くなり誠に申し訳ありません。ありがとうございます！早く完結できるよう頑張ります！ (12月13日 8時) (
レス) id: caa96760da (このIDを非表示/違反報告)
ひあの(プロフ) - めっちゃめっちゃ面白いです！！更新楽しみにしています！！！！ (12月8日 7時) (レス) @page4 id: 426f9a3d0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わーい | 作成日時：2023年12月7日 8時
