芽生える ページ30
遠征艇というものは、迅が思ったよりもずっと窮屈であった。
それもそうだ。遠征艇一つ飛ばすのにも莫大なトリオンが必要であり、ボーダーは人数が多くもないのでそれほどまでのトリオンを供給することは事実上不可能である。比較的トリオン能力が優秀な迅らが供給を行っているが、これからの戦闘のことを考えるとあまり消費したくないのが現状だ。
しかし迅は平気だった。狭かろうが広かろうが、そもそもボーダーの目的は艇ではなく近界だ。艇は近界へ辿り着くための手段であり、重要なことはもっと別なところにある。
しかし、それが我慢ならない者もいるのだった。
「せまーいっ！ 迅、もっとそっちに行きなさいよ。これじゃ眠れないわ」
「小南、静かに。もう寝てる人もいるんだ」
「はーい、レイジさん……。迅、さっさと詰めてよね」
「はいはいっと……」
その代表格が小南桐絵である。彼女は最年少なだけあって精神はまだまだ未熟、我慢や遠慮とは無縁の存在であった。こういう場合、そんな彼女よりは幾分か大人の迅が大人しく従う他ないのだ。
こんなふうに、迅はボーダーに入った当初から結構小南に振り回されてきたのだが、最近はだいぶマシだった。なぜなら迅よりも大人な、木崎レイジという男がいるからだった。迅のことを容赦なく呼び捨てにする小南も、彼にはしっかり「レイジさん」と敬称をつける。何とも理不尽な状況ではあるが、小南は普通にいいやつなので迅は黙認している。
この艇はカタリナが乗ってきた方で、メンバーは迅、小南、木崎、A、カタリナの五人のみである。ボーダー所有の艇の方が幾分か大きいというのと性別などを考慮し、女子どもと男性陣という分かれ方になった。木崎はもちろん、迅もそういうことに関しては信頼されているのである。
ボーダー最強の最上やそれに次ぐ忍田などはもう一方の艇に集まっているが、万が一道中で危険な目に遭ったとしても、ここにいる人々はかなりの強者である。このメンバーならば
「……Aさん、寝ないの？」
毛布を被った迅が声をかけたのは、パソコンとにらめっこをしばらく続けていたAであった。作業に邪魔なのか、珍しく前髪を束ねているAが「んー」と曖昧な返事を返す。暗くした艇内でディスプレイの光を反射し、Aの髪が黒っぽく光った。
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ノア(プロフ) - Noahさん» あいしてます (2021年9月21日 17時) (
レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 金の帳さん» ありがとうございます。迅さんカッコいいですよね！ 続編もよろしくお願いします。 (2021年9月21日 17時) (レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - すきです (2021年3月20日 2時) (レス) id: 3eb26abe40 (このIDを非表示/違反報告)
金の帳 - めっちゃおもしろいです！迅さんはやっぱりかっこいいですね！更新楽しみにしてます！ (2021年2月8日 23時) (レス) id: 1e8abd378d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア | 作成日時：2021年2月7日 10時
