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止めていた足を再び動かし始め、迅の家へと歩を進める。午後は雨が降っていたのに、今は雲も晴れていて星が見えているのだ。せっかくだしと迅は星空を眺めながら歩く。Aも同様に星を眺めながら歩いていた。
家族はまだ家に帰ってきていないだろうから、家につけば迅はしばらく一人になる。いつものことだから慣れているというのに、迅は寂寥感を覚えた。それもそうであろう。たった半日で、Aと小南という強烈で愉快な人々に出会ったのだ。もの寂しい思いをしても仕方あるまい。
迅は少しだけ、歩幅を小さくした。Aはすぐに気がつき、「どうかした？」と迅を振り返る。迅はヘラリと笑い、「いやー」と首を振った。
「まだ家に帰りたくないなーって思ってさ」
「お？ 寂しいのか。また明日も会えるのに……悠一君は人を喜ばせる天才だね。照れちゃうな」
「照れた？ ははっ、やった」
飄々とした態度で「照れちゃう」などとのたまうAと、それに対して余裕気な笑みで返す迅。この二人は案外似た者同士なのかもしれない。
そういうことなら、Aの本能は正しかったのだ。自分が死ぬだろうから迅も死んでしまうと思った、とは字面だけ見ればただの押しつけだが、そこに二人が似ているからという事実を加えればむしろ論理的な判断と言ってよい。Aは迅の本質を見抜いていた。
Aの手が優しく迅の頭に乗り、さわさわと髪を梳くように、その後ぽんぽんと叩くように撫でた。迅が横目で彼女を見ると、非常におだやかな、優しい瞳がこちらを見つめている。
「寂しいなら言いなさい。わたしが悠一君の傍にいてあげる。危険な世界に連れ込んでしまったからには、わたしが責任を持って護ってあげる」
「……」
「もっとも、わたしは大学にバイトにボーダーで忙しいんだけど。まあ非常時には飛んでいくから呼んでくれていい」
「……Aさん、お互い様だよ」
苦笑いで指摘した迅に、Aは「さて何のことやら」と言って哄笑した。星すら割れるような、気持ちのよい笑いだった。
ちょうど迅の家に到着し、迅はそれを言った。Aが頷き、胸ポケットから紙とペンを取り出したかと思うと、さらさらと数字を書き記し、「わたしの連絡先」と片目を瞑って差し出した。
迅がしっかり受け取ったのを確認して、Aは「また明日」と来た道を引き返して行く。途中で一度振り返ったので迅は大きく手を振った。Aは小さく肩を揺らして、そしてまた帰途を辿った。
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ノア(プロフ) - Noahさん» あいしてます (2021年9月21日 17時) (
レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 金の帳さん» ありがとうございます。迅さんカッコいいですよね！ 続編もよろしくお願いします。 (2021年9月21日 17時) (レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - すきです (2021年3月20日 2時) (レス) id: 3eb26abe40 (このIDを非表示/違反報告)
金の帳 - めっちゃおもしろいです！迅さんはやっぱりかっこいいですね！更新楽しみにしてます！ (2021年2月8日 23時) (レス) id: 1e8abd378d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア | 作成日時：2021年2月7日 10時
