＊＊＊ ページ2
「嘘だね」
女性がきっぱり言った。
「なぜですか？」
「そりゃ簡単だ。いっつも見てたからだよ」
「どこから」
「あそこ」
そう言って女性が指した先には、川の真ん中に建つ建物があった。そういえばそんな建物があった気がしなくもないが、まさかあんな古そうな建物を利用する人がまだいるとは。人の出入りなんてなさそうなのに、と迅はぼんやり思った。
「まあ嘘だろうが構やしないけど」と女性はまた煙を吐き出す。とうとう迅は顔を顰めた。
女性はまた唐突に言う。
「君のその目、きれいだね」
「……そうですか？ おれは、あんまり好きじゃないけど」
未来なんて視えないほうがいい。心の中で迅が付け加える。
しかし女性は大きくうなずいた。「きれいだ」と。確かに青い瞳は珍しく、おれ以外にとってみればきれいなのかもしれない。
「ひょっとして、だけど」と女性は躊躇いがちに言う。
「君、見たくないものまで見えたりしない？」
「？！」
なぜこの女はそんなことを知っているんだ。この目のことは、小さいころ、家族に言ったくらいなのに。今は誰もそのことを知らないのに。
女性は迅の反応を見て確信したのか、煙をふうと吐き出す。「何が見えるかは知らないけど、大変そうだね」と言われて、迅は複雑な思いだった。確かにそうだが、この女性に何かを知られているのはなんだか気が引ける。おれだってこの目のことをあまり知らないのに。
迅は思い切って尋ねてみた。
「何か知ってるんですか、この目のこと」
「……いや。期待させて悪いけど、君の力に関してはほぼ無知だ。わたしは"そういう人たち"がいることを知っているだけだから」
「そう、ですか……」
明らかに落胆した迅に同情してか、女性は付け足した。「でも、君よりは知っていることが多いかもしれない」。
「本当ですか？！」と食い気味に反応する迅を見て、女性は苦笑した。「知りたいなら教えてやるけど、本当に少しのことしか知らないんだ」と言いながら煙草の火をもみ消す。迅は「教えてください！」と叫んだ。
女性はまた苦笑し、「ちょっと難しい話になるけど」と前置きした。
「人間には、『トリオン器官』というものがあってね……あまり研究は進んでいないのだけど、どうも『トリオン』とやらが多いと、常人より優れた感覚を持つこともある、らしい。君のはそれじゃないかとわたしは思ってる」
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 213人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ノア(プロフ) - Noahさん» あいしてます (2021年9月21日 17時) (
レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 金の帳さん» ありがとうございます。迅さんカッコいいですよね！ 続編もよろしくお願いします。 (2021年9月21日 17時) (レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - すきです (2021年3月20日 2時) (レス) id: 3eb26abe40 (このIDを非表示/違反報告)
金の帳 - めっちゃおもしろいです！迅さんはやっぱりかっこいいですね！更新楽しみにしてます！ (2021年2月8日 23時) (レス) id: 1e8abd378d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ノア | 作成日時：2021年2月7日 10時
