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ひょくを守る

その約束を果たす日は、突然にやってきた



｢帰っていいよ、まだ長引きそうだし｣


バイト中にかかってきたひょくからの電話

机の陰に隠れ、こそこそと電話の向こうのひょくと話す


ひょくはいつもの時間を見越して、既に出版社の地下駐車場に来ているらしい


まだ終わらないから帰れというのに、待ってるの一言


この、頑固オヤジめ


｢Aちゃん、もしかして彼氏？｣


｢えっ、｣


｢今日は良いから、もう帰りなさい｣


｢でも！｣


会話の内容を聞いて、横に座っていた先輩がそう声をかけてくれた



｢じゃ、お言葉に甘えて｣


｢うん！また明日ね｣


｢お疲れ様です！｣



片手に携帯、もう片方に鞄

先輩方に挨拶を済ませ、放置していた電話の向こうのひょくに今向かうと告げる



携帯を鞄に仕舞い、エレベーターで地下駐車場へ降りる


昼でも夜でも薄暗いそこは、出来れば避けたい場所


ドンへは周りを気にせず正面玄関で待っているけれど、ひょくはちゃんとしてるから必ず地下駐車場に来てくれる



｢ひょくの車はー･･･｣



鞄のストラップをぎゅうっと握ってあたりを見渡す


EH｢A！｣


急に呼ばれた名前に、ビクッと肩が震える


後ろを向けば、サングラスをかけたひょくが手を挙げていた


｢ごめん、待たせて｣


EH｢帰るぞ、頑固者｣


｢はぁ？頑固者はどっちよ｣


EH｢お前だろ｣


｢ひょくでしょ｣


くだらない、口喧嘩をしながら車へ向かう


まるで昔に戻ったようで、とても心地よかった


このまま、ひょくと居られたらいいな




そう思えたのも一瞬のことで･････


｢･････ひょく｣


EH｢･･･！！｣


もう、二度と聞きたくなかった声に肩をびくつかせるひょくとわたし


そっと振り向けば、俯き佇むあの女



EH｢なんで、ここに｣


｢ひょく、その女に騙されないで｣


EH｢何言ってんだよ｣


｢その女は私達を引き裂くつもりよ｣


EH｢引き裂くも何も･･･俺達、とっくに終わってる｣


｢･･･可哀想に。わたしが助けてあげる｣


EH｢はぁ？･･･｣



精神的におかしくなっているのか、彼女はまだひょくと付き合っているつもりらしい


ブツブツ何かを呟きながら、彼女はポケットを漁る


EH｢A行くぞ｣

｢うん、｣


ぎゅっと私の手を引くヒョクチェ

ちらっと後ろを見た時に見えた、銀に光る鋭い物

ひょくが危ない！刺される！



｢･･･ヒョクチェ！｣






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