百七十二歩 ページ44
どういう理屈か自分でもわからんが、あの人が今の皆の雰囲気ぶち壊してくれる気がした。
ヴィル先輩や皆に笑顔を向ける彼は、愛らしさに優勝の栄誉をプラスして眩しさ増し増しだった。
光属性通り越して最早聖属性のオーラ…剣呑な空気も壊せ！やれ！行け！
｢Aさん、声に出てます｣
｢止められなかったごめん｣
｢気持ちはわかりますけど｣
呆れる監督生に真顔で謝って、またステージを見ると何と今度はルーク先輩が泣いているではないか！
あの獰猛なサバナクローの寮長にも怯まず、クルーウェル先生の目の前でとんでもない調合しやがるルーク先輩が！！
｢泣いてる顔も美しい｣
｢最早ギャグですね、Aさんのそれ｣
｢ガチガチのガチなんだが｣
｢尚笑えますから｣
エース君て結構興奮すると声でかくなるよね。
俺には聞こえました、会員番号、若ッ！て言葉。
…は？
｢まさか、ルーク先輩ってネージュのファンなんじゃ…？｣
｢…は、まさか…いや、そうっぽいかも…わぁ、やばぁ…｣
…ねぇ、ヴィル先輩大丈夫？うっかり瘴気を充満させたりしない？
アズール君みたいに、もうやだぁ〜！！ってオギャられたら今度こそ止められる気がしな…いや、人いっぱいいるから平気か。
もう心置き無くオギャっていい、今まで努力してきた貴方にはそれが許されると俺は思います。
ネージュに向けられるルーク先輩の熱い眼差しよ…潤んだ目で涙ながらに何語ってるんだろうな…
言葉は聞こえないけど、その雰囲気にこれぞガチ勢だなって思いました。
俺、全然ガチ勢名乗れないレベルの低さだったわごめん。
何時もと雰囲気違い過ぎて逆に笑えない。
笑顔で褒めてくれるからこそなんだなぁ…俺の中では。
ヴィル先輩は怒りとか失望とか通り越したのか、呆れてる。
そう、呆れてんのよ顔が。
こんな先輩見たら色んな感情吹っ飛んだわ。
｢…俺ぇ…ルク担辞めるぅ｣
｢同担拒否するほど過激派だったのに現実見て冷めたんですね｣
人生ってそんなもんですよ…と肩を優しく叩いてくれる監督生…おめぇ何か辛い事でもあったのか？
逆に心配になるわ。
｢…俺、ルーク先輩の事好きだけど、あんなの知りたくなかったなぁ｣
｢ガチ恋じゃないですか｣
｢いやぁ…何だかんだ優しくて頼もしくてさ、フロイド君にも臆さずむしろ追い掛けてくのすげぇなぁって…尊敬してたのよ｣
｢Aさんも十分フロイド先輩に臆してないですけどね｣
うるせー慣れだわ。
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作者名：きない | 作成日時：2021年1月13日 18時
