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百四十九歩 ページ21

ヴィル先輩はトップクラスの役者だろうけど、ちゃんと自身の感情を見せる。
妥協を許さず、汗水垂らして努力もする。
他人にも強要する部分は彼の意識の高さ故で、それがまた美点であり欠点でもある。
ほっとけって思う事がこっちからすれば多のに、それでも彼は良かれと思って言っているし、それはお節介と言う人間特有の物だ。
妥協を許さないっていう彼の性格もあるんだろうけど。
人間臭さがあるから、あんなにも美しいのに遠い存在とは思わない。
マレウス様との違いはそれだ、とどうでもいい事に気づく…本当にどうでもいい。
ルーク先輩も泥まみれにもなるし妥協はしない、勿論努力だって惜しまない。
それでありながら、他人の怠惰には寛容で、それさえも褒めてしまえる人だ。
ヴィル先輩との大きな違い、それは相手に干渉しないしさせない事。
ありのままを美しいと受け入れる彼だからと言えばそれだけど。
物凄く近く感じられるはずなのに、近づこうとすると必ず見えない壁がある。

「誰にだって、秘密はあるよね」
「まぁな」
「俺はないぞ」
「思ってるだけ、絶対あるから」
「えー…思いつかないけどな」
「カリム君…人間は誰だって秘密がある、それには自分では気づいてない事もあるんだよ」
「気づかなかったら隠せないじゃないか」
「知らないうちに、隠してる事もある」

ジャミル君の言葉に、カリム君は暫く彼を見つめていた。
それから、そっか、と呟いた。
何か思い至ったのだろうか。

「Aにも秘密はあるのか?」
「…まぁ、俺も人間ですから」

セベク君に罵倒されるくらいには人間だ。
あ、ちょっと腹立ってきた。

「そうか」

俯いたカリム君は少し寂しそうだった。
隠し事を聞くのはいけないとわかっていても、知りたいと言うのは当然の事だろう。

「秘密じゃなくなったら話すよ」
「…おう、待ってるな!」

笑ってくれたけど、気持ちとは反対なんだろうなぁ。
カリム君も、変わったのかな。
ジャミル君をチラリと見たけど、肩を竦めるだけだった。




エペデュース脱走事件と多分同時刻くらいかな。
俺は購買に食材と日用品を取りに行っていた。
サムさんが準備してくれるのを待っている間、ここでもめっちゃ雑用係じゃん…とウンザリしているとイデア先輩がやって来て、ビクッとされた…何で?
それから、何時も以上に疲れた顔でお菓子を漁る先輩を見ていたんだが、会計にやって来た先輩の言葉に驚いたよね。

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作者名:きない | 作成日時:2021年1月13日 18時

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