短編集(JUMP×JUMP) (ページ37)

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スティンガー ybin ページ37

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いの→やぶ
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side yb

伊野尾からの好意はなんとなく感じていた。

同じグループになって、年上組としてひとくくりにされることも多くて。しかも同期で。

10年以上も家族同然の付き合いをしていたら、さすがの俺でもあいつの気持ちは察していた。

ただ、伊野尾が何か行動を起こすことはなかったし、俺はあいつの気持ちに気付きながらも、ずっと見て見ぬ振りをしていたから俺たちの関係が変わることはなかった。

もちろん、俺が伊野尾のことを恋愛感情として好きな気持ちはこれっぽっちも芽生えなかった。

その日はたまたま俺と伊野尾の仕事が終わる時間が同じで。

ほんの好奇心から、悪戯心から伊野尾を飯に誘った。

俺のことを好きならば、俺が誘ったらどんな顔で嬉しがるのだろうと、そんな身勝手な、横暴な気持ちだけだった。

少し戸惑った後に、嬉しそうな顔で頷く伊野尾を見て、こいつに骨抜きにされる男が、女が、あとを絶たない理由が分かった気がした。

少しだけ期待するような、縋るような眼をする伊野尾を見て、可哀想だとも思った。
俺の好奇心のためだけに、俺の暇つぶしのためだけに純真で、綺麗な淡い恋心を踏みにじられている伊野尾が哀れで、愚かで、気持ちが悪くて。

飯を食っている間は普通だった。
当たり障りない仕事の話をして、メンバーの話をして。
あの時のロケのあのお店の何が美味しかった、とか。
薄暗い個室の中、オレンジの光に照らされていた伊野尾はいつも通り純粋無垢な、キラキラという表現が似合う好意を俺に向けていた。