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つづき。
ベッドに腰掛ける薮くんの目の前に立って、俺はなるべく冷静を装って言う。
『薮くん、あのね、面白い話があるって言ったじゃん?実は伊野尾くんのことなんだけど。』
「あぁ、伊野尾がこの部屋でお前に抱かれてる話か?」
「知ってたよ、そんなこと。」
コトリ、と薮くんがサイドテーブルにコーヒーを置く。
知ってるって、、??
「あいつ分かりやすいからな〜〜
お前とヤった日は帰ってきて必ず最初にシャワー浴びるのよ。
健気で可愛いよな。笑」
今俺の目の前にいるのは誰なのだろう。
俺が知ってる薮くんは、いつもふにゃふにゃ笑ってて、伊野尾くんのことを大事に大事に壊れ物のように扱っていて。
それ故に伊野尾くんは俺に抱かれに来てたはずで。
だからこそ、今日ここで2人の仲を壊そうと、壊せるはずだと思っていたのに。
俺のベッドに腰掛けながら微笑んでいる彼は、俺の知っている薮くんではなかった。
こんな冷たく綺麗に笑う薮くんを俺は知らない。
「なぁ高木。
俺、お前が思ってるより短気なんだよね。
お前のことも、もちろん大好きだよ。
でも、伊野尾を引きずり込もうってなら話は別。
あいつは俺だけのもので、俺の所にだけ堕ちてこればいいんだから。
高木。次はないよ。」
いつもの調子で淡々と話す薮くん。
口元には笑みが浮かんでいるが、その目はゾッとするくらい暗く深い色をたたえている。
その視線は俺を捕らえて離さない。
耐えきれなくなった俺が先に目をそらしてしまう。
気がつくと、いつもの優しい薮くんの顔に戻っていた。
「おっ、こんな時間じゃん。
本当は"俺も"泊まっていきたいけど今日は帰りま〜〜す」
冷めきったコーヒーを飲みきって「ごちそうさま。」と華麗に帰っていく。
彼が帰って初めて、自分が怯えていたことに気づく。
完敗だった。
きっと、伊野尾くんが俺に抱かれに来ることはもうないだろう。
今までこの寝室にいたあの男は、自分の手元に彼を捕まえておくのが上手な人だから。
きっと本人も気がつかないうちにズルズルとひきずりこまれて、気付いた時にはそこでしか息が出来ないように躾けられているのだろう。
伊野尾くん。君の恋人は思った以上に君にぞっこんみたいだ。
でもね、俺の1番も伊野尾くんなんだ。
次は負けない。必ず奪ってやる。
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作者名:あさり | 作成日時:2018年9月28日 4時