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あれから5年の月日が流れた。
家族仲は今でも険悪。
俺は芸能界を引退、いや表向きには休止だが実質引退と言っても過言ではない。
俺は【普通の学生】として高校に通っている。
誰も俺のことを知らない。

「A!マッフ寄ってかね?」
「おう、行くわ!」

俺も友人がたくさんできて楽しい学校生活を送れてる。
勿論、純粋に演技をしていたあのときも楽しかったが。
そのとき、ブーブーと携帯のバイブ音が鳴った。

(なんだ?)

携帯を見てみるとマネージャーからの連絡だった。

「……ごめん、先行ってて〜!」

俺は集団の中から抜け、電話に出た。

「もしもし、何か用?」
《あ、Aくん?あのね、テレビ番組から元天才子役としてテレビに出ないかってお仕事頂いたの!どうかしら?この機に戻ってくるとか……》

やっぱり、己の利益の為に番組に出させようとするのか。
芸能界にとって当たり前かもしれないが俺は嫌だった。

「……しばらく連絡してこないで。」
《え?Aくん!?》
「もうやめろ!」

思い切り電話を切った。
テレビに出るのは好きだ。皆が俺を見てくれる。
お金は好きじゃない。お金を持つと持った人間の汚さが滲み出てしまうから。

(マッフ行くか…)

皆を待たせてる。フライドポテトでも奢ってやるか。
ソースは何がいいかな、ソフトクリームでもいいな。

『Aくんはどうして芸能界に入ったの?』

楽しそうだったからだ。

『何が楽しい?』

演技をすること。自分じゃない自分を演じるのが楽しいから。
分かってる、分かってるんだよ。
俺だって本当は芸能界に戻りたい。またキラキラとした世界を見たい。
でも両親のあんな姿は見たくないんだよ。
金に溺れて嫌なところが滲み出てて。

「悪ぃ!遅くなった!」
「おう、いいぞー!俺達も今来たところだからな。」

よかった、怒っていないようだ。

「てかA、何かあったのか?」
「え?」
「だって顔暗いぞ?」

顔に出てたのか?
演技力も鈍ったもんだな。

「何も無かったよ。心配してくれてあんがと。ポテト奢ってやる」

そう言うと皆俺も!と声を上げる。
まぁ、遅れた俺が悪いし皆の分を奢ってあげる。
この時間が一生続けばいいのに。

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作者名:しょー | 作成日時:2020年12月14日 23時

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