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ゆっくりと阿部が指さした方、カウンターの奥にはオープン当初から置いてある水槽。
舘さんが何故かオープン祝いに友人から貰ったという熱帯魚たちが優雅に泳いでいる、、のはいつもの事だけど
その横には見覚えのない小さめの水槽が1つ。
熱帯魚用の水槽とは違う、青白い色の照明で当てられた水槽はアクアリウムみたいに水草とかがあるわけではなく、ほんとにただただ水槽に水が入ってるだけ。
その中で、ふわふわと浮遊している、ミズクラゲ。
「あぁ、そういえば、忘れてた」
「え、なんでこんな大事なこと忘れる？笑」
「舘さんたまにそういうところあるよね〜笑」
「あれ、いつからあるの？」
「つい最近？常連の子が預かってくれって」
ｶﾞﾀｯｯ！！
「っ！舘さん！その子、どんな子！？」
「ちょ、照落ち着いて！」
「っ、、わりぃ」
クラゲがいたことにも驚いたけど、それ以上に常連の子、と舘さんが言った瞬間
淡い期待をしたのは事実で。
もしかしたら、クラゲがここに来たかもしれない。
そう考えたら心臓が馬鹿みたいに高鳴って。
自分を抑えるのに必死だった。
「…舘さん、その子、というかその人？常連なんでしょ？名前とか聞いたことないの？」
「カイヅキさんってことしか…」
「カイヅキ…クラゲ、じゃない…」
「カイヅキ、、」
「…阿部？どうした？」
「カイヅキって、海の月…？だとしたら、」
「…っ！？」
「…照っ、！」
「え、まって、俺ついていけてない」
「クラゲって、漢字だと海の月って書くんだよ」
「なるほど…？」
「だから、その、カイヅキさん、照の探してるクラゲちゃんかもよってこと」
「マジで？」
「いや、まぁ分からないけど、可能性はあるよね…」
「もうダメだ、俺もう疲れた……」ｺﾞﾝｯ
「ちょ、照、おでこ跡になっちゃう」
「…お酒追加する？」
「するーーー」
淡い期待と、あまり期待を持ちすぎると違った時に落ち込むからって思う冷静な気持ちと。
そんなんで感情がぐっちゃぐちゃになって
なんかもう疲れて机に突っ伏した時。
遠くからお店の扉が開く音が聞こえて。
『こんばんは、空いてます？』
なんて、たった一言なのに
あの夜を思い出させるのには十分すぎるくらい。
今でも鮮明に覚えている、
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作者名：maoka. | 作成日時：2023年8月4日 19時
