… ページ7
「おまっ…、走るの早すぎ。アスリートかよ…」
肩でぜえぜえと呼吸しているローレンは、私よりもだいぶ辛そうなのに優しく微笑んでいた。着いてきてほしくなかったのに、「おい！」と引き止める声を聞いた時に心のどこかでは来てくれるんじゃないかって期待をしていた。
だってローレンは優しいから。女の子をこんな夜中に1人で出歩かせるような人じゃないことくらい知っている。半袖で上着なんか着ていなくて、慌てて追いかけてきてくれたのだろう。
ローレンを見つめている自分が今、どんな表情をしているのかまるで検討がつかない。けど、滲んでいく視界と熱くなる目が全てを語っている。
私が知っているローレンよりも、その好きな子の方が深くローレンを知っているのだと思うと胸が張り裂けそうだった。頑張るって決めたのに、私はどうしてこんなにも弱いんだろうか。
「ねえ、ローレン」
ローレンの表情なんか見えやしないけど、ただ慌ただしく動いていることだけはわかる。振り絞った声は震えていて、応えたローレンのたおやかな声にまた喉の奥が熱くなるのを感じた。
「好きな人ってさ…」
ああ、ダメだ。さすがの私もこの先の質問がどう転んでもダメなことくらいわかる。こんなの好きですって言ってるのと同じだ。ダメだ、ダメ。どうにか挽回できないかと必死に考える。けれど何も浮かばない。きょろりと視線を泳がせて、下を向いた私に降ってくるいつもよりも低い声。
「俺の好きな人が何？」
どきっとした。怒っているのだろうか、さすがに桃鉄でいじめすぎただろうか。違う、怒らせたかった訳ではない。視線を戻すと、いつになく真剣な表情のローレンが私をしっかりと捉えていた。
「あ…、えと…。あの…」
「Aはなんで泣いてるん」
「ちが、泣いてなんか…」
「泣いてるやろ」
私と同じようにしゃがみ込むと、頬を温かい手のひらが包む。親指がそっと目の下をなぞって、涙を拭っていく。
「やだ、触らないでよ…」
「本当に嫌？」
嫌だよ、だってこんなの私以外にもしてるんでしょ。なんて思っても言葉には出せなくて、じんわりと同じ体温になっていくのが心地よかった。
「知りたい？俺の好きな人」
直球すぎる質問に、私は否定も肯定もできなかった。私じゃないなら知りたくないけど、参考のためにも聞きたいのは事実で。
返事をしない代わりに片方の手にそっとローレンの手の上に重ねた。少しだけびくっと震えたのが頬に伝わって、すりっと顔を寄せた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 424人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつりか(プロフ) - はなさん» コメント本当に励みになります！ありがとうございます！私も2人の気持ちが通じて嬉しいので存分にイチャイチャさせるつもりです！まだまだ続くので、良ければそのまま読んでいただけたら幸いです！ (3月20日 12時) (
レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
はな - 素敵なお話、いつも楽しく読んでいます！ついにlrnが気持ちを伝えましたね。2人の関係にヤキモキしながらきゅんきゅんしていましたが、やっと通じてうれしいです！これからはお互いに気持ちをオープンにできるといいな。 (3月19日 16時) (レス) id: 688b0f975d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まつりか | 作成日時：2024年3月10日 13時
