トラウマ ページ17
バンド演奏を披露する時から、本当はずっと怖かった。ライブ活動は何度も行ってきたけれど、そのどれもが私主体のものだった。
私のことを応援してくれている人たちが、私を観に来てくれる。だからなんの不安もなかった。でも今回のにじフェスは違う。
2時だとかというグループで、私以外のファンも大勢いる。思い出すのは、いくら探したって見当たらない私の色。歓声の上がらないソロパフォーマンス。
トラウマ、というやつだろう。どうしようもなく怖くて、もし私の色が見つからなかったら、シークレットステージで誰も反応してくれなかったら。
どくどくと嫌な心臓の響きを感じながら、ひばが歌い出す。ぽつぽつと灯るライトには紫、赤、水色、それから白。ほっと安堵したのも束の間、演奏に集中していればあっという間に終わった。
本題はここからだ。いまだに震える手足を抑えるようにガンガンと太ももを叩く。翔さんの大袈裟な前振りが終わったと同時に歓声が止む。静まり返った会場に響くのは私の歌声。
暗闇からバッとスポットライトに照らされ、客席から私の姿が見えたと同時に静かだった会場に色めく声が目立った。
ライトが徐々に白一色へと染まっていく。その光景が痛いほど私の胸を刺激した。ぐっと喉が詰まりそうになるのを必死に堪えて歌い上げる。
ここにいていいのだと、ようやく認められた気がした。楽しい。今までにないくらい、1番楽しい。もっともっとみんなに喜んでもらいたい、私を観てほしい。
最後のポーズを決めて会場を見渡す。表情は笑顔を作っているけれど、溢れる涙は止められなかった。きっとみんなには見えていないだろう、3D体とは便利なものだ。
鼻を啜ったり目元を拭う仕草をしたらバレてしまうだろうから、流れる水分をそのままに舞台から降りると待ち構えていたひばから熱烈なお迎えを受けた。
飛びついてきた後輩をいなしていると、少し後ろに佇む赤を見つけた。私と目が合うとひらりと手を振って「お疲れ」と微笑んだ。
その瞬間、膝から崩れ落ちた。自分でも訳がわからなくて、突然視界から消えた私に困惑しながら上から見下ろしてくるひばと不思議そうに見つめ合う。
お互いに戸惑っているとすっと横から差し出された手。硬そうな指先が見える。
「何してんだよ、ほら」
ぶっきらぼうな言い方なのに、彼が見せる表情とは正反対だった。眉毛を下げて、柔らかく上がった口角と目尻。
どくんと心臓が高鳴って、催眠にかかったように手を重ねた。
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まつりか(プロフ) - はなさん» コメント本当に励みになります！ありがとうございます！私も2人の気持ちが通じて嬉しいので存分にイチャイチャさせるつもりです！まだまだ続くので、良ければそのまま読んでいただけたら幸いです！ (3月20日 12時) (
レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
はな - 素敵なお話、いつも楽しく読んでいます！ついにlrnが気持ちを伝えましたね。2人の関係にヤキモキしながらきゅんきゅんしていましたが、やっと通じてうれしいです！これからはお互いに気持ちをオープンにできるといいな。 (3月19日 16時) (レス) id: 688b0f975d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まつりか | 作成日時：2024年3月10日 13時
