… ページ2
「すげえいい匂いする。俺の好きな匂い」
触れるか触れないか、ギリギリの距離にある唇がゆっくりと動くのがやけにはっきりとわかる。むず痒くて抵抗しようとローレンの肩を押すと、いとも簡単に捕らわれて手首を掴まれる。
顔の横に押し付けるようにして拘束すると、首筋に埋めていた顔がゆっくりと離れていき、正面から私を見据える。
「会ったときから思ってたんよ」
そこには焦がれた視線が確かにあった。あの日、何度も私に向けられたらいいのにと願った、慈しむようにゆるりと弧を描く猫目が私を見ている。
「その化粧も、髪も、よく似合ってる」
気付いてくれてた。それだけでも嬉しいのに、似合ってると。絶対に聞けないと思っていたから、私の心はそれだけで舞い上がってしまう。
「…本当？」
「嘘はつかんて。可愛いよ」
ぶわっと込み上げてくる熱が、頬に確かな赤みをもたらしている。顔を隠したくて片手で必死に覆うけれど、やんわりと掴まれて同じように拘束された。
「見せてよ。俺のためにしてくれたんでしょ？」
「う〜…」
そうだけれど、恥ずかしすぎる。こんなの勘違いしないほうがおかしい。もしかしてローレンの好きな人は私なのではないかと。
「どうなん」
「そうだよ…！」
「ほっぺこんなに赤かったか？」
指摘されたことが余計に恥ずかしくて、けどどこにも逃げられないからただぎゅっと目を瞑った。
「はあ〜、お前ほんっと…」
再びぼすりと首元に顔を埋めると、しばらく動かなくなった。その間も抜け出そうと身体を捻ってみるけれど、なんの意味もなかった。
もう私にはどうすることもできなくて、意味もなくもだもだと暴れているとメッセージアプリの着信音が鳴り響いた。私のものではないことから、ローレンのだとわかる。
「ローレン、電話鳴ってる」
「うん」
「うんじゃなくて！出ないと！」
またぺちぺちと身体を叩くと、鳴り止まない音に観念したのかのそりと身体が離れていく。少しだけ不機嫌そうに声を荒げて電話に出ている隙に体勢を立て直す。
出しっぱなしの食器に申し訳なさを覚えつつも、見てないことをいいことにいそいそと帰り支度を進める。話しの内容からマネージャーだろうか。段々と真剣な声音になっていく。
上着をさっと手に取ると、チラッとこちらを見たローレンに片手をあげて逃げるように家をあとにした。
外は肌寒いのに、掴まれていた手首が、吐息のかかった首筋が、全身が茹だるような熱はなかなか冷めなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 416人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつりか(プロフ) - はなさん» コメント本当に励みになります！ありがとうございます！私も2人の気持ちが通じて嬉しいので存分にイチャイチャさせるつもりです！まだまだ続くので、良ければそのまま読んでいただけたら幸いです！ (3月20日 12時) (
レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
はな - 素敵なお話、いつも楽しく読んでいます！ついにlrnが気持ちを伝えましたね。2人の関係にヤキモキしながらきゅんきゅんしていましたが、やっと通じてうれしいです！これからはお互いに気持ちをオープンにできるといいな。 (3月19日 16時) (レス) id: 688b0f975d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まつりか | 作成日時：2024年3月10日 13時
