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わかっている。私はただの友達で、彼には好きな人がいて。私にこんなことを聞かれたって最悪引かれるだけか、面倒くさい女友達になるだけだ。むしろ友達ですらいられない、気持ち悪いやつになってしまうかもしれない。
でも、どうしてもさっきの表情の理由が知りたかった。私が少しでもローレンにそういう感情を抱かせたなら、もう我慢なんかしたくなかった。好きな人と付き合っていないなら、私がその好きな人になるチャンスだってまだあるはず。
疲れたのだ。彼に一喜一憂して、忘れようとしてバカみたいに仕事を入れて自分を追い込んで。
これは私の今後を決める賭けにも等しい。友達の権利すら失おうとしているけれど、もしローレンが肯定してくれたなら…。
「自惚れじゃない?」なんて言われたらきっと私の心は死んでしまう。
ローレンが口を開くために息を吸い込む音がする。それに合わせてぎゅっと目を瞑った。
「それは当たり前じゃない?」
降ってきた声は、私の予想していたものよりも何倍も優しい音だった。耳に心地の良い、わずかな甘さを含んだ彼の少し掠れた低音。
かさついた何かが手の甲をくすぐる。なんだろうと目を開けると、掴んでいるのとは逆側のローレンの腕が私に向かって伸びている。彼の手だと理解するのにそう時間はかからなかった。すりと親指で甲をなぞりながら、潜り込んできた指先が握った拳を開かせるように緩い力で解いていく。
ゆっくりと解かれていく右手が完全に開いたと思ったら、すかさずローレンの右手が絡まってきた。指先だけが繋がれたそれにびっくりして引っ込めようとするが、重ねられた手が許さなかった。
「A」
「な…んでしょう…」
「こっち向いてよ」
独特なリズムのとぼけた口調なのに、いつもよりもずっと艶っぽい気がして視線はずっと下を向いたままだ。
「無理…」
今ローレンの顔を直視できない。嬉しさと恥ずかしさからなのか、自分の顔が熱い。何故だか涙も出そうだ。指先に力を込めれば、同じ力で返されてびくりと震える。
「嫌じゃなくて無理なん?」
ローレンの左手がいつの間に私の頬を包み込んでいて、下から持ち上げようとしてくる。とても見せられるような顔でないことはわかっているから、ローレンの方に捻っていた上半身ごとそっぽ向く。
数秒の沈黙の後、吐息をこぼすように笑うと行き場を失った手がポンと頭を跳ねたと同時に、右手の温もりも離れていく。
「また明日な」
遠くで扉の閉まる音がした。
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まつりか(プロフ) - ひかりさん» ひえ、生きがいにしてくださっているなんてお世辞でも私には過分なお言葉です…!ありがとうございます!捻り出して続き書きます! (2月18日 7時) (レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 更新ありがとうございます🩷今の私の生きがいです!これからの展開予想でドキドキしちゃいますね!応援してます(^^) (2月17日 22時) (レス) id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - ひかりさん» コメントありがとうございます〜〜〜!自己満足で書いているものですが、そう言っていただけてとても嬉しいです!やっと続きを思いついたので、またぼちぼち更新していく予定です! (2月15日 11時) (レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 最高です!優しい推しの姿想像してドキドキしちゃいました。続き楽しみにしています! (2月15日 0時) (レス) @page35 id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - あーこっとさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!コメントまでしていただいてとても嬉しいです!感謝です! (10月9日 12時) (レス) id: 117b51e2b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつりか | 作成日時:2023年10月8日 9時