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「立てないマ?!」
「手貸してください」
今度は私から手を伸ばす。少し考えたような素振をみせたあと、ローレンから伸びてきた手は私の手を通り越した。その手は伸ばした腕の下を通って背中にあてがわれた。もう片方の腕は膝の裏へと潜っていき、いつの間にかしゃがんでいたローレンがそのまま力を込めて立ち上がった。
落ちると感じた恐怖を少しでも和らげようと、身体を安定させるために彼の肩にかかっていた自分の腕を空いてる手がグッと掴んだ。
「お、さすがの反射神経。そのまましっかり掴まってろよ?」
フッと柔らかく笑うと、その薄い身体のどこにそんな筋力があるのかと不思議に思うほどスタスタと歩き出した。まさかのお姫様抱っこに戸惑いを隠せず、すぐ目の前にはローレンの首筋があって妙に恥ずかしくなる。
「ねえこれ恥ずいって!おろして!!」
「暴れると落とすぞ」
「ぐっ…!」
「歩けないならこれが1番てっとり早いだろ」
「けど私ぜったい重いし」
「そうか?普段もっと重いやつ相手に訓練してるからむしろ軽いど」
嘘だ。私の体重は筋力増量したおかげで、公式に発表されているよりもはるかに増えている。60kg目前、きっとローレンよりも重いはずなのに、その足取りはしっかりとしていた。
時折鼻を掠めるタバコの香りがやけにローレンを意識させる。意外とがっしりとした肩幅や、背中に感じる腕の力強さにローレンの男の部分を見せつけられているようだ。
ローレンの胸板にくっついている心臓が、さっきとは違う理由でドキドキと高鳴っている。
ずるい、ローレンって本当にずるいよ。こんなの、誰でも彼に恋してしまう。たかが道路の道幅分がいつまでも続けばいいのにと思ってしまう。
けど、終わりはあっという間だ。ほら、と下ろされたのは玄関前。置いてきたカバンを駆け足で取りに行くローレンを眺めては、好きという感情が溢れ出す。
未だへたり込む私の前に差し出されたカバンから鍵を取り出し、立てない私の代わりに玄関の鍵を開けてくれた。今度は片腕を肩に担がれ立ち上がらせてもらい、そのまま玄関をくぐった。
「靴脱がすから一旦おろすぞ」
玄関先の廊下に腰掛けた私の前に跪き、宣言通り靴を脱がせてくれたローレンの絵になること。ほうっと見入ってしまっていると、またしてもお姫様抱っこで運ばれている。
早業にもほどがあるだろう。ズンズンと廊下を突き進み、勝手知ったるかのように開けっぱなしになっていた寝室へと入って行った。
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まつりか(プロフ) - ひかりさん» ひえ、生きがいにしてくださっているなんてお世辞でも私には過分なお言葉です…!ありがとうございます!捻り出して続き書きます! (2月18日 7時) (レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 更新ありがとうございます🩷今の私の生きがいです!これからの展開予想でドキドキしちゃいますね!応援してます(^^) (2月17日 22時) (レス) id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - ひかりさん» コメントありがとうございます〜〜〜!自己満足で書いているものですが、そう言っていただけてとても嬉しいです!やっと続きを思いついたので、またぼちぼち更新していく予定です! (2月15日 11時) (レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 最高です!優しい推しの姿想像してドキドキしちゃいました。続き楽しみにしています! (2月15日 0時) (レス) @page35 id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - あーこっとさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!コメントまでしていただいてとても嬉しいです!感謝です! (10月9日 12時) (レス) id: 117b51e2b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつりか | 作成日時:2023年10月8日 9時