チグリジア 2

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「俺が思うに、ろれさん絶対その友達のこと好きだよな！」

傷口に塩をねじ込んでくるひばの無邪気な笑顔のこと。「そうかもね」と愛想笑いで返す。そんな私の様子など気にせず、興奮したように続けた。

「だってさあ、プレゼント選んでるときのろれさんの顔見た？」

うん、見てたよ。今まで見てきたなかで1番ふにゃけた顔だった。ひどく穏やかで、見たくなかった。

「なんかもう、大好き！って表情で訴えてたよな」

そうだね、羨ましいくらいに。その視線が私に向いてくれてたら良かったのに。

「途中でイブさんも気付いててさあ、俺たちの方が恥ずかしくなっちゃったよ」

私は辛いだけだったよ。お願いだからもう喋らないでほしい。ひばのこと、嫌いになってしまいそうだ。

「りんちゃんも気付いた、でしょ…」

ようやっと私を振り返ったひばが段々と語気を小さくしていく。それもそうだ、また私の嫌いな私が出てきたのだから。目が熱い。視界に映る床がぼやけ始める。

「あ、え…、もしかして…」

ごめんと慌て出し、手をあたふたと忙しなく動かしている。自分が嫌になる。後輩を困らせて、惨めったらしく泣くことしかできなくて、立ち直ることもできない。

こんな先輩のどこがかっこいいのだろうか。哀れなだけだ。けど、やっと見つけた好きという感情を手放したくはなかった。初めて、心の底から1番になりたいと思ったんだ。

でもそれは叶わないとわかっている。わかっているから、せめて。

マイクをガッと掴み、感情に任せてただ叫ぶ。絶叫に耐えられずキィーンと響く音と共鳴するように不協和音を奏でる。

「なんで私じゃないんだよーーー！！バーカバーカ！あの長髪赤髪キザ野郎！！！」

「人たらし！好きな人って誰だよ！！なんで黙ってたんだよ！！教えてくれたっていいじゃん！絶対に知りたくないけど！！」

「友達でいたかったのに！！！好きになっちゃったじゃん！どうしてくれんだよ！！」

「初恋がいきなり失恋とか意味わかんない！嫌いにならせてよ！！」

「好きのままじゃ！！このままじゃ辛いよ…！！」

言い終えた頃には酸欠状態で、肩を上下に揺らしていた。喉も気にせず全力で叫んだからだろう。仕事に響いたらまずいな、なんて場違いにも考えては短く笑う。

最初は耳を抑えあっけに取られていたが、黙って聞いてくれていたひばを振り返る。もう情けない私は見せないから、最後に想いをぶちまけるくらいは許してほしい。

「私の秘密、ちゃんと守ってよね」

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