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翼のおかげでのんびりと個室でコスメを吟味できるなか、忙しないのは変わる変わる紹介される品々だった。既に翼が私宛へのコスメを3つほど決めたが、ローレンはいまだに悩んでいるようだ。たまらずに声をかけると、困ったように眉を顰めた笑みが返ってくる。
「似合いそうってのは何個もあるんすけどね」
と、その女性を想いながら笑うローレンはなんとも言いがたい、慈愛に満ちた表情をしていた。そんな彼を見たくなくて、飛び出るようにしてお手洗いに逃げた私は愚かだ。
ローレンはあの性格だ、親しい女性などいるに決まってる。モテるだろうなというのも、嫌と言うほど今まで身をもって感じてきた。本当に今更すぎる。誰に贈るのだろうか。彼の親しい女性など、私はあまり知らない。わざわざ女の子っぽいものと明言するくらいだ、可愛らしい人なのだろう。アルスさんか、リリムさんか。はたまた奈羅花さんか。最近やたらコラボしてるし。
嫉妬、している。こんな感情を持つなんて想像もしなかった。こんなにも誰かを好きになれたんだと、思いもしなかった。
鏡に映る自分はひどく情けない顔をしている。気合いを入れ直すようにパンッと両頬を叩き、じんわりと痛むそれを携えながら彼らの元へと戻る。
その道中、目に入った喫煙ルームになんとなく目を向けるとそこにはローレンの姿があった。
おそらく初めてかもしれない、彼の喫煙姿を目にしたのは。驚きのあまり歩みを止めて凝視していると、こちらに気付いたローレンがひらりと片手を振る。
タバコを持ったもう片方の手は口元に置かれていた。手を振った直後、すぐに伏し目がちに吸われたタバコはじりじりと赤い線を描き縮まっていく。
深く吸い込んだのち、ふっと息を吐くその姿に思わず見惚れてしまった。じっと見つめている私を疑問に思ったのか表情で訴えてくる。
これ以上留まっていては流石に変人だろうと、何を血迷ったか私は喫煙室の扉へと手をかけ侵入した。
「お、おねーさんも吸う人っすか」
「ううん、吸わないけれどなんとなく…?」
「なんすかそれ」
ぶはっと大きく息を吐くように笑うと、そのまま下から私を見上げてくる。ヒールのせいで私より低い位置にあるローレンの頭が、ゆるりと距離を詰めてくる。
「おねーさん、疲れてません?」
じっと私を見つめるその翠色の瞳はまるで私を観察しているようだった。
全てを射抜くようなギラついたそれは、私のことさえ見抜いているのではと鼓動の音を加速させた。
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まつりか(プロフ) - ひかりさん» ひえ、生きがいにしてくださっているなんてお世辞でも私には過分なお言葉です…!ありがとうございます!捻り出して続き書きます! (2月18日 7時) (レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 更新ありがとうございます🩷今の私の生きがいです!これからの展開予想でドキドキしちゃいますね!応援してます(^^) (2月17日 22時) (レス) id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - ひかりさん» コメントありがとうございます〜〜〜!自己満足で書いているものですが、そう言っていただけてとても嬉しいです!やっと続きを思いついたので、またぼちぼち更新していく予定です! (2月15日 11時) (レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 最高です!優しい推しの姿想像してドキドキしちゃいました。続き楽しみにしています! (2月15日 0時) (レス) @page35 id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - あーこっとさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!コメントまでしていただいてとても嬉しいです!感謝です! (10月9日 12時) (レス) id: 117b51e2b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつりか | 作成日時:2023年10月8日 9時