チグリジア 2

遭遇 ページ25

ライブは無事に大成功に終え、数日間の休暇をもらった。テレビでも取り上げてもらい、THE FIRST TAKEへの出演が決まっていることも重なりチャンネルの登録者数は80万人を超えようとしていた。記念企画もそろそろ考えなければいけないなあと、出掛ける準備をしながらなんとなく構想する。

今日は翼と出掛ける予定になっている。可愛くしてきてねとハートがつきそうな勢いでお願いされてしまっては私も彼女の可愛さに抗えず、久々にお化粧なるものをしている。

つり目を活かすように少しキツめにアイラインを引いて、濃い目のアイシャドウに細かいラメを乗せる。いわゆる強い女だとか言われる雰囲気にどうしてもなってしまう。もう少し柔らかくしたいと思ってはいるが新しいメイクを勉強するのも億劫なので現状維持だ。まあ、翼はこれが好きだと言ってくれるからいいだろう。

髪は身バレ防止のために何個か用意しているウィッグを被る。ショートだとキツくなりすぎるから、パーマがかかったロングに毛先に向かって色が明るくなっていくグレージュをチョイス。

服装は前日にファッションショーを開催してもう決めてある。細身のパンツとセーターで女性らしさを残しつつ、かつ上品に見えるようにショート丈のジャケットを羽織る。ピンヒールに足を通せば「私」の出来上がりだ。

これが本当に私のしたい格好なのかはわからないけれど、似合っているのは確かだからいいだろう。玄関の全身鏡で最終チェックを行い、翼との待ち合わせ場所へと向かった。

ショッピングをして、ご飯を食べてその後カラオケに連行されるいつものパターンだろうなと記憶を呼び起こす。

もうすぐで着くというところで翼から到着を知らせる連絡が来た。まずい、彼女が先につくとは思わなかった。マスクと帽子をしていても翼は可愛いから変な輩に絡まれてないか心配になりながらヒールを鳴らす速度を早める。

身長が180に届きそうな女の早歩きはなかなかに迫力があるようで、人が少しだけ避けてくれるから歩きやすくて助かる。

翼指定の待ち合わせ場所に着くと、彼女の明るい声がどこかから聞こえる。手遅れだっただろうかと辺りをきょろりと見回すと、バチっと目が合った人物に動揺を隠せなかった。

なんでいるの？！と思わず叫びそうになるのをグッと堪え、再度翼を探す。彼女の声の方に向かっていくと、もう一つ聞き慣れた声。

こちらに気付いた翼が大きく手を振って存在をアピールしている。その奥には紫と銀色の男達。

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