チグリジア 2

密偵　side.lrn ページ3

エアコンがぶっ壊れたから泊めてほしいとリンネから連絡が来たとき、正直かなり迷った。人を泊めることは全然いいのだが、相手に問題があった。こうみえて片思い中。しかも未だに性別は謎。

了承したのは下心が10割だ。わんちゃん性別わかんねえかなって気持ちと、俺が断ったら誰のところにいくんだという嫉妬もある。他の男の家に泊まろうもんなら嫉妬で狂ってしまいそうだ。

荷物を抱えたリンネを出迎えたとき、妙に緊張した。自分の部屋から余っている布団を持ってきてソファに寝転がる。リンネの歯を磨く音や、顔を洗っているのだろうか、うるさくない心地良い生活音は次第に眠気を誘い、そのままソファで寝落ちした。

はずだったのに目覚めたら自分のベッドの上にいた。は？？ベッドはどう考えたってリンネだろ。好きなやつをその辺に転がして寝かす男がどこにいる？リビングへと駆けるように向かうと、ソファでくつろいでいるリンネの姿。

おはようという言葉に少しのむず痒さを覚えたが、次からはベッドで寝るよう念押しをして今日の予定をこなすべく準備にとりかかる。

かねてより決まっていたバンドの練習だ。今日は軽くみんなで合わせをすることになっている。リンネも今日は出掛けるらしい。業者が来るのだとか。一生出番など来ないと思っていた合鍵を渡し、いってらっしゃいと見送られて外に出る。

なんか、すーげえ恋人っぽい。いいな、こういう感じ。嬉しい、照れる、独り占めしたい。幸せというのだろう、そのままスタジオに行くと早速イブにからまれる。

「ローレン、なんかご機嫌じゃない？」

「それ俺も思った！ロレさんなんかウキウキしてますよね」

「そうか？あ〜もしかしたらあれかも、今日の合わせが楽しみ過ぎて出ちゃってるのかも」

「遠足前の小学生かよ」

ここにリンネがいたらもっといいんだけどな、なんて思う。実はドラムの候補にリンネは上がっている。というか、なんなら決定の方向で進んでいる。

何故声をかけないかというと、リンネを誘うのに俺たちのスキルが低すぎるのではないかという懸念だ。湊は言わずもがなギターは上手い。それに、歌のプロのリンネを差し置いて雲雀をボーカルに据えているのだ、俺たちがリンネのドラムの腕に追いついていないと誘うに誘えなくないか？という状況だ。

実際、どれだけ叩けるのかは誰も未知数なのだが、練習中にきたリンネの連絡を見られ事情を説明すると、ドラムの腕を確認してこいというミッションが発生した。

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