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お酒を抱えて自宅に戻ると、玄関先でうずくまっているリンネが目に飛び込んできた。廊下とはいえ風の通らないここはたいそう暑いだろうに。
額に前髪を貼り付かせ、何やらまた重苦しい顔をしている。俺が差し出した手を簡単に掴み、ぐっと立ち上がる力の弱さに悶えそうになる。
リンネの後を追って、冷蔵庫にお酒と少しの食料をしまう。俺は宅配で頼んでしまったが、きっとリンネは何も食べていないだろう。普段彼女が好んで頼んでいるメニューと似たようなものを購入してはいる。
冷蔵と冷凍を見極めながらその食料とにらめっこしていると、ソファをポンポンと叩きながらこっち来てと可愛らしい要求がされる。ニヤけそうになるのを隠しながらしきりに叩く彼女の隣に腰掛けると、いつもよりも覇気のない声で語られていく過去。
正直、こんなに重たいとは思ってもみなかった。それと同時に、リンネが1番にこだわる理由がなんとなくわかった。
ずっと誰かに認められたかったのだろう。愛されているという自信が欲しかったのだろう。「皆の1番でいさせてください」と、「愛してるよ」とよく口にするくせに誰よりもそれを求めているなんて皮肉だ。
本当の自分さえもわからなくなっているリンネが、ひどくいじらしくて愛おしかった。
なら俺はどうしたらいいだろうか。何が正解かはわからないけれど、今まで耳にした彼女の評価を述べていくことしかできなかった。
自分で自分がわからなくとも、俺が知っているリンネは、Aはこんなにも愛されているとわかってほしかった。
それすらも今の彼女には届かないのかもしれないけれど、それなら彼女が認める自分を俺に教えてほしい。
俺がAの全肯定botになる。
そのつもりで伝えると、小さな膝に顔を隠してしまった。かと思えば、俺を伺うようにチラとこちらに顔を向ける。
眉をハの字にしならせ、色素の薄い紫色の瞳にうるうると十分に水分を帯びたそれはアメジストのように輝きを放ち、泣くのを我慢するように口の端だけの口角をぎゅっとあげたその笑顔はなんとも魅力的だった。
そのまま寝てしまったAを抱きかかえ、自分のベッドにそっと寝かせる。寝息を立てる彼女の愛らしいこと。
ずっと見ていられるが、今日のリンネを見てやはり早急にバンドメンバーにお迎えせねばと決意が固まった。
しかし、バンドグループチャットに貼られていたリンネのスケジュールを見て絶望した。
2ヶ月先まで埋まっていて、忙しいにも程がある。
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まつりか(プロフ) - ひかりさん» ひえ、生きがいにしてくださっているなんてお世辞でも私には過分なお言葉です…!ありがとうございます!捻り出して続き書きます! (2月18日 7時) (レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 更新ありがとうございます🩷今の私の生きがいです!これからの展開予想でドキドキしちゃいますね!応援してます(^^) (2月17日 22時) (レス) id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - ひかりさん» コメントありがとうございます〜〜〜!自己満足で書いているものですが、そう言っていただけてとても嬉しいです!やっと続きを思いついたので、またぼちぼち更新していく予定です! (2月15日 11時) (レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 最高です!優しい推しの姿想像してドキドキしちゃいました。続き楽しみにしています! (2月15日 0時) (レス) @page35 id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - あーこっとさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!コメントまでしていただいてとても嬉しいです!感謝です! (10月9日 12時) (レス) id: 117b51e2b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつりか | 作成日時:2023年10月8日 9時