チグリジア 2

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「それが高3の終わりぐらいだったかな。大学も受験してなかったから、辞めたあとはあそこの家借りてしばらくニートしてたの」

「うん」

「そしたらね、20歳の誕生日のときにお父さんが急に来て、お兄ちゃんから預かってたものだって」

大量の紙袋のなかには、たくさんのプレゼントが詰まっていた。渡されたDVDには兄からのメッセージが入っていた。絶対に古いのから見ること！と懐かしい兄の筆跡。

9〜15と書かれたそれを手にとって再生してみると、パンッと大きな音が鳴り響いた。

「A！9歳の誕生日おめでとう！って、今更かもしれないけど、毎年お祝いはしたくてさ。こうしてメッセージ残してみた。父さんに20歳になったら渡してくれって頼んであるから、今は20歳？だよな？」

そこからは母の教育に疲れてしまったことや、私への謝罪、母の異常な態度の理由や、私のことを大好きだということが語られていた。

メッセージは、毎年の誕生日を祝うものだった。9歳から始まり、タイトルから察するに25歳まであるようだ。父が抱えているプレゼントは、兄が用意したものらしい。

開けてみると子供のおもちゃからネックレスまで、年相応になっていた。

「18歳の誕生日おめでとう！彼氏はできたか？兄ちゃんよりかっこよくないとダメだぞ！認めないからな！挨拶させにこい、兄ちゃんが見てやる！！」

「19歳おめでとう！大学生だな！サークルは入ったか？兄ちゃん実はお前みたいに歌が上手ければ軽音楽やりたかったんだよなぁ。ギターボーカルとかできたらモテそうだよな！変なやつに捕まっちゃだめだぞ。お前は母さんに似てキレイだから兄ちゃん心配だよ」

「20歳の誕生日おめでとう。お前とお酒飲んでみたかったなあ」

流れる兄の愛情に溢れたメッセージにただ泣いた。

父にも、何もできなくてごめんと謝られた。けれど一緒に暮らす気にはなれなかったから、これからはたまに会おうと約束をした。

それからは自分を見直すために配信活動を行った。社会に出るのは少し怖かった。まだ自分がよくわからなくて、どうしてもつらくなってしまうときは兄からのメッセージを流した。

そうして2年過ごし、配信者としても人気が出始めた頃にじさんじと出会った。私と同じように自分の性がよくわからない人もいれば、人外の人もいて、ここだと思った。ここでなら本当の自分を見つけられるのではと思い応募したのだ。

「これが、私が性別不詳にしてた理由」

グラスの氷はすっかり溶けていた。

一滴→←…

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