チグリジア 2

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ありきたりな謳い文句だが、私はそれに飛びつくように応募した。母譲りの顔の良さと、長けた運動能力と歌唱力のおかげでオーディションは難なく突破。


男女混合グループでデビューするはずだった。女子3人、男子4人。私と男子から1人のメインボーカルであとはダンサーのダンス＆ボーカルグループになる予定だったのに、女の子2人が来なくなった。デビュー日はすでに決まっていて、オーディションするにも間に合わなかったのだ。


運動と同じくらい、歌うのは好きだった。歌うと母に怒られていたから、兄の前や、こっそり歌うことしかできなかった。やっと誰にもとらわれないで自由にできると思ったのに、事務所からメインボーカルは男子1人にすると言われた。女の子が1人になってしまっては、私は目立ちすぎるから歌うなと。


なら、私もデビュー自体辞めてしまおうと思ったが他のメンバーからいてくれと止められた。全員から頭を下げられては、私も断れなかった。女1人で、「サンゴ」というグループ名でデビューを果たした。


徐々にだが知名度も上がってきたあるとき、ファンから届いた一通のファンレターに衝撃を受けた。「私のリョータくんをとらないでください。女はいらないから辞めろ」と。リョータは、私を女の子だからと特に色々気遣ってくれていた。


メンバーは優しかった。基本的には男女の境なく接してくれていたが、必要なときはしっかり女の子扱いしてくれた。それがファンの癪に障ったのかもしれない。


メンバーと交流をしているだけで「調子乗るな」「お前はいらない」「なんでいるの」と、罵倒されるようになった。ブログを更新すれば「仲良いアピールうざい」「1人で行けよ」などと書かれ、私のコメント欄は閉鎖された。


売れ残るグッズ、プレゼントBOXにはゴミが入れられ、ついにはソロダンスで歓声さえなくなった。誰も私を求めていないのだと痛感し、もう耐えられなくなりグループを脱退した。


メンバーと同じように自分も男の子だったら？何度そう思ったかわからない。新しい自分を見つけにいったのに、余計自分がわからなくなってしまった。


辞めたとき、メンバーから「ごめん」と謝られた。誰も私を認めてくれないのだと、色々と限界だった私はその謝罪を否定的に受け止めてしまった。謝らないでほしかった。ただありがとうと言ってくれればよかったのに、メンバーにも私を否定されたようで「嫌い」と思ってもないことを口にして最後に喧嘩別れをした。

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