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シャワーを手早く済ませると、途切れ途切れベースの音が聞こえる。懐かしい、自分の覚えたてのときを思い出す。基礎化粧品を肌に染み込ませ、髪を乾かしリビングへと戻る。
「ベースどんな感じ?」
「まあまあよ」
そばの楽譜を見ると、初心者にオススメのもののようで、少ない音で構成されている。
「ちょっとやってたとはいえ、久々だとむずいな」
「わかる。俺も忘れないように定期的に弾いたりする」
「リンネはさ、どんくらいできんの?」
「どんくらい?う〜ん、楽譜見たら弾けるくらいかな?」
「つよ。ギターとかドラムもそんな感じか」
「そうだね」
「ふ〜ん…」
この流れがむずいんよなあと苦戦するローレンを見て、微笑ましくなる。
「なんか余裕ぶっこいてない?!」
「こいてない、こいてない」
もっと酷いのを想像していたけど、レッスン自体は前から受けていたのだろう、音はキレイに奏でられていた。募る羨ましい気持ち。あのメンバーから誘われない以上、自分からやりたいというのは何か違うような気がして、沈黙を貫いている。
仲いい人たちが自分抜きで遊びの計画をそこそこしっかり立てていたような、なんとも言えない気持ちだ。
「ローレン、そこ指違う」
「違うマ?!」
バンドメンバーにもなれない、ローレンの3Dお披露目にも出れない。忙しくてスト鯖にも顔を出せない。視聴者のために配信はするけど、単発だったり他シリーズだったり、歌枠だったり。酷いときは翔さん直伝の生活音たれ流しをメン限で披露している。
お披露目配信は後輩が出ないから当たり前だけど、寂しいのは事実だ。「リンネさんと歌うんだ!」と駄々をこねたというひばの気持ちがやっと理解できた。後輩が先に3Dなるって寂しいわ。
最後まで通しで弾けたローレンは嬉しそうに「どおよ」と自慢している。すごいすごいと手を叩いて称賛を送った。
「リンネもなんか弾いてよ!てか弾いてる動画とかないん?」
「あ〜練習用に撮ってるドラムの動画はいっぱいあるけど」
「がち?!見たい見たい!見せてよ」
「いいよ」
オンラインで繋がった人とセッションしたのも合わせて見せると、すげえとシンプルな感想。
「噂には聞いてたけど本当に叩けるんだな…」
「そんな嘘はつかないだろ、普通」
なるほど、と小さく呟いたローレンは時計を見て慌ただしく防音室へと向かった。配信のためだろう。私も配信したい。
人の家だから歌うのもはばかられるし、ひとまず夕飯を作るとしよう。
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まつりか(プロフ) - ひかりさん» ひえ、生きがいにしてくださっているなんてお世辞でも私には過分なお言葉です…!ありがとうございます!捻り出して続き書きます! (2月18日 7時) (レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 更新ありがとうございます🩷今の私の生きがいです!これからの展開予想でドキドキしちゃいますね!応援してます(^^) (2月17日 22時) (レス) id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - ひかりさん» コメントありがとうございます〜〜〜!自己満足で書いているものですが、そう言っていただけてとても嬉しいです!やっと続きを思いついたので、またぼちぼち更新していく予定です! (2月15日 11時) (レス) id: b15522b6ae (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 最高です!優しい推しの姿想像してドキドキしちゃいました。続き楽しみにしています! (2月15日 0時) (レス) @page35 id: 066d5681b9 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - あーこっとさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!コメントまでしていただいてとても嬉しいです!感謝です! (10月9日 12時) (レス) id: 117b51e2b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつりか | 作成日時:2023年10月8日 9時