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「あ、Aさんいた!これ追加の洗濯なんすけど、もう回しちゃってるっすよね…」

どうやら後出しされた洗濯物たちらしい。小松崎くんが両手に抱えて、申し訳無さそうにこちらを見ている。

「洗濯機はもう一台あるから大丈夫よ」

「助かるっす!じゃあこれお願いします〜って言いたいところなんですが、自分も手伝うっすよ。この量女の子一人じゃ大変だろうし」

そう言うと、断る間もなく彼は持ってきた洗い物を洗濯機に詰め込み、手際よくコーヒーを淹れた。一人になりたいから別に手伝わなくてもいいのだけれど、ここまでされると戻ってとは言いづらくなってしまった。

仕方ないとこっそりため息をついて、一人喋り続ける小松崎くんの話しに耳を傾けた。どうやら彼は野球が好きだけど自分には才能がないから、少しでも関わりたくてマネージャーになったらしい。

相槌とオウム返しとは便利なもので、少ない単語で会話を成立させることに成功している。

練習試合で大活躍したローレンのことを、興奮しながら話している。洗濯はとっくに干し終わっているのになかなか戻ろうとしない彼を促すが、私の声は届いていないらしい。もう置いていっていいかなと諦めたとき、私を呼ぶ大きな声。

「Aー?」

これ幸いと小松崎くんに一言謝罪をして、声の主を探す。いや、探さなくてもいいか。うん、そうしよう。私を探す声はいまだに響いているが、無視してグラウンドへと進んでいると突然腕を後ろから引かれた。

重心がずれた身体はよろつき、倒れそうになるのを後ろの人物が支えてくれた。思い出すのは、あのときの記憶。恐怖で震える。口からは音にならない声がこぼれている。怖い、助けて、ローレン。逃げなきゃ。何から?呼吸がうまくできない。

「おいA!」

「ろ…れん…」

私を必死に呼ぶ声にはじめてすぐ隣にあった人の顔を見る。けれど、顔を認識するよりも前にその赤を見つけた。震える腕を伸ばして、彼の頬に寄せる。確かにそこにある体温に安心して意識を手放した。


目が覚めると、視界には真っ白い天井。下半身に感じるずっしとした重み。動けない理由を探るべく視線を下に移すと、私を枕に寝ているローレン。

カーテンがかけられており時計は見えないけれど、身体を起こして隙間から見える外の景色は陽が伸びてきたとはいえ暗くなっていた。

ずっと側にいてくれたのだろうか。

じんわりと汗をかいている額には前髪が少しへばりついていて、暑そうに眉根を寄せている。

記憶→←…



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まつりか(プロフ) - 瑞稀さん» ありがとうございます! (9月15日 7時) (レス) id: 117b51e2b8 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - 最高です…!!! (9月14日 13時) (レス) @page40 id: 3f4ee46d03 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - 清掃員Cさん» ありがとうございます!!そう言っていただけると励みになります! (8月30日 8時) (レス) id: 117b51e2b8 (このIDを非表示/違反報告)
清掃員C(プロフ) - もうめちゃくちゃ良いです好きです更新楽しみにしてます (8月30日 3時) (レス) @page25 id: 1f64b1c9bc (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - 恵蓮さん» ありがとうございます〜〜!初コメントいただけてとても嬉しいです!まだ着地点を見つけられていないのですが、必ず完結させるので最後まで読んでいただけたら幸いです。興味を持ち続けていただけるよう頑張ります! (8月27日 0時) (レス) id: 117b51e2b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まつりか | 作成日時:2023年8月17日 14時

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