第二話『いつも通りの探偵社』 ページ3
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「Aちゃん!お願いだからさ!?私と1回だけで良いから!心中をしよう!?」
「やぁーだ。兄さんに怒られるもの」
「じゃあ入水!」
「どっちも同じだし駄目だからね!?」
……こんな二人のやり取りを見るのは、これで何回目だろう。
敦は一人、そんなことを思っていた。
太宰がここまで
「また駄目だった……っ」
床に手を付き明らかに落胆の素振りを見せる、太宰。
敦はそんな太宰を見て溜め息を吐いた。
「Aさんは仕事が忙しくて心中所じゃないんですよ。……あ、太宰さんもAさん見習ってきちんと仕事して下さい!」
「えぇー?私、今日は充分やったよー?」
「全ッ然やってません。太宰さんが今日やったのはAさんを心中に誘った事だけです」
「敦君毒舌ッ……!!」
何処が毒舌なんですか、とツッコミを入れながら敦はAをチラリと見る。
──真剣に依頼と向き合っている、Aの端正な横顔を。
その彼女を見て「そういえば」と、敦は太宰に聞きたかったことを思い出した。
Aの仕事の邪魔にならないように、ひそりと敦は太宰に声を掛ける。
「あの、太宰さん」
「なんだい?」
「谷崎さんが言ってたんですけど、太宰さんとAさんって、本当に一緒に武装探偵社に入ったんですか?」
「うん。それがどうかした?」
「ああ、いえ……てっきり、Aさんは乱歩さんの妹なので乱歩さんと一緒に武装探偵社に入ったのかと」
そう呟いた敦を見た太宰は何故か誇らしげに言う。
「ま、私とAちゃんは長い付き合いで凄く仲が良かったからね。そりゃ探偵社くらい一緒に入るさ!」
「へえ……」
どうやら、谷崎が少し前に言っていた「二人は一緒に探偵社に入ったらしい」という噂は本当だったらしい。
最も、敦にとって、何故Aが乱歩と一緒に探偵社に入らなかったのかは謎のままだったのだが。
「……うん。Aちゃんはとても良い子だよ。前の職場でも見てたから、私が保証しよう」
「えっ、Aさんって太宰さんと同じ職場だったんですか!?」
「そうだけど?」
掘れば掘る程出てくるAの話。
その話に興味が湧いて、気付けば僕は、随分長い時間仕事を放ったらかしてしまっていた。
「…………」
そんな「太宰とAは昔から仲が良い」という話を聞いていた水亜奈が、密かに彼女に嫉妬していた事を知らずに。
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椿姫 - 私の好き組み合わせです!更新楽しみにしております。 (2022年6月23日 18時) (レス) id: 910387af12 (このIDを非表示/違反報告)
雪菟(プロフ) - とりあえずはアニメ4期までに完結させられたらいいな、なんて思いながら今は書いているので、もしこれからもういさんがこの小説に付き合ってくださるのなら私も嬉しいです!ありがとうございます! (2022年5月26日 0時) (レス) id: 6c414d52f3 (このIDを非表示/違反報告)
雪菟(プロフ) - ういさん» 感想ありがとうございます!いえいえ、こちらこそ長らく待たせてしまってすみません……。正直もう更新する予定はなかったのですが、たまに覗きに来るとたくさんの人が小説登録してくれていたりして、なんだか書いた方がいいのかなぁ、なんて思ってしまいまして……笑 (2022年5月26日 0時) (レス) id: 6c414d52f3 (このIDを非表示/違反報告)
うい(プロフ) - 更新、再会&書き直し、ありがとうございます!すごく好きな小説だったので、更新今か今かと待ち続けてました!なので改めてもう一度新鮮な気持ちで読み直せることがとても嬉しいです。無理せず楽なペースで更新なさってください。いつまでも待っています(*´꒳`*) (2022年5月25日 20時) (レス) @page3 id: 6252188cf9 (このIDを非表示/違反報告)
雪菟(プロフ) - (分割で申し訳ないです)太宰さんは私の推しでもあるのでもうめちゃくちゃに動かしてます…これからも乱歩さんや太宰さんが心の支えになって頂けたら嬉しいです。ありがとうございます! (2021年3月31日 18時) (レス) id: c84cf1fd05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪菟 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2019年5月9日 1時