自宅警備7 ページ8
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「コナンくん、学校は?」
「今日は早帰りだったんだけど、言うの忘れててご飯をポアロに食べに来てたの」
「そうなの…今何年生?」
「僕、小学1年生!」
「そっかぁ、若いねぇ」
小学1年生がお昼ご飯を喫茶店で。
もう次元が違う。
知らぬ間に隣に腰を落ち着けているコナンくんは、美味しそうにオレンジジュースを飲む。
「お待たせAちゃん」
「ありがとうございます」
「梓さん、今日も一人なの?」
そう言ったのは、半分になったオレンジジュースをカウンターに置いたコナンくん。
「えぇ、また休むって連絡があって」
「…そうなんだ」
「バイトの話?」
いつものことですよ、と困ったように梓さんが笑う。
「Aちゃんはまだ会ったことなかったっけ」
「いつも梓さん1人ですね」
「Aお姉さん、そんなによく来るの?」
僕とも初めましてだよね、とあどけなく聞いてくるコナンくんに肩を竦める。
「引きこもる仕事だからね。散歩がてらに外に出て、気分転換に此処に立ち寄ってるの」
「飲んだら帰っちゃうから、滞在時間も短いものね」
「やっぱり外は落ち着かなくて」
お家万歳。
今更だが、自宅警備員が外出していいのか、なんていうツッコミは受け付けてない。
侵入者とは外からやってくるものだ、見廻りも大切だろう。
お家万歳、が聞こえたのかは分からないが、隣でコナンくんが苦笑していた。
見かけによらず、しっかりしているらしい。
「…ご馳走さまでした」
「もう帰っちゃうの?」
「雨が弱いうちに帰りたいからね」
何をなつかれたかは知らないが、立ち上がった私に向けられるその視線から逃げるように足を進める。
「僕、お姉さんがどんなお仕事してるのか見てみたいなあ」
「…」
会計を済ませて店の外。
ちょこちょこと着いてきて、足元でニコニコと笑うコナンくんを無言で見つめる。
江戸川コナン、小さな探偵。
「悪いけど、それは出来ないね」
目を細め、口角をあげる。
「探偵ごっこも悪くないが、危機感というものを持った方がいい」
コンクリートに落とした金属片が、メチリと音を立てて潰れる。
「焦りは禁物だよ、少年。そう生き急ぐな」
背を向け歩き出したが、途中で振り返った。
まだコナンくんは動いてなくて、こちらを眼鏡の奥から凝視している。
そんなに見られたら照れてしまうな。
「私は珀羅橋A。また会えるといいね」
黒いフードを深く被る。
白のRX-7とすれ違った。
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梦夜深伽(プロフ) - 明里香さん» ありがとうございました! (2020年7月3日 17時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 16に誤字がありました。「じゃかいか」ではなく、「じゃないか」です。 (2019年4月25日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年6月1日 22時