自宅警備16 ページ17
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上機嫌、ではない。
速度制限なんて知らないふりをして、誰もいない山道をただ疾走する。
用が済んだインカムを前方へ投げ、バイクで踏み潰す。
(ちゃんと忠告したのに)
クスリと笑った。
脳内で先程の会話が反芻される。
(全て聞いたでしょう、名探偵)
避難所ぐらい事前に用意している。
盗聴機をしかけるなんて朝飯前のこと。
(お得意の推理で彼を_)
景色が急に広がった。
片側に広がる、砂利の駐車場。
道路沿いに立つ照明灯がぼんやりと頼りなく明滅している。
速度を落とすも足りなくて、砂煙をあげながら停止した。
闇に溶け込むような、真っ黒なポルシェ。
「…もしかして遅刻?」
「もしかしなくても遅刻だ」
車から降りていたのだろう、木々の間、闇から姿を現したのは大男。
ビリビリ伝わる殺気と全身真っ黒な服、そしてこの不気味な場所でなければもっと素敵な再会だったろう。
「家を出るときにバタついてしまってね。予定より遅くなった」
わざとらしく肩を竦める。
それに対する返答は、舌打ちと銃口。
「迎えは断ったはずだよ。それなのに深夜に黒服が押し寄せてくるじゃないか、怖かったねえ」
「手間かけさせやがって」
「驚いた?」
楽しかったでしょ、と笑う。
踏み込まれた部屋は間違いなく安室透の部屋で、同棲していた部屋_
の向かいのマンションの部屋。
外観を似せて、間取りから家具の配置まで、そもそもあの土地の所有者は私だ。
調べあげられ住所を特定してくることなんて読めている。
「怪我人はいないでしょ?私は平和主義だからね」
土足であろうと、客人には最低限のもてなしをした。
「顔が怖いよ」
「うるせぇ、死にたくなきゃこっちへ来い」
「せっかちだねえ」
そんなに気に入らなかったかい?
「電子レンジをこつこつ買うのは地味だったね」
卵を爆発させて、その土地全ての電力を集結させて真昼より明るく発光させた部屋。
いくつもの電子レンジで一斉に温められた卵、音を拡声させるためにマイクまで置いといたのだ。
誰も傷つかない、強いて言えば私の財布が傷んだ。
それでも気に食わなかったらしい。
額に当てられた銃口、人殺しの目と視線が交差する。
「バーボンはともかく、テメェのことは調べがついてんだ」
反射的に、黙りこむ。
「元公安、いや、復職したらしいな」
「ッ!」
口を開く前に首に落とされた手刀。
意識があっという間に遠退く。
地面に倒れる前に、抱き上げられた気がした。
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梦夜深伽(プロフ) - 明里香さん» ありがとうございました! (2020年7月3日 17時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 16に誤字がありました。「じゃかいか」ではなく、「じゃないか」です。 (2019年4月25日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年6月1日 22時