笑って少女5 ページ6
真選組。
「これは…」
「大変なことになりやしたねィ」
「今Aちゃんは?」
「さっき風呂に行って…今頃は
終兄さんのとこにいると思いやすぜ」
「そうか」
局長の近藤勲は腕を組んで考え込んだ。
土方、沖田と三人で囲んでいるのは例の折り紙。
「どうするんで?」
「ヤマザキの報告次第だろうな、
まだ帰ってきてねぇのか」
「そういえば遅いな、もうかなり…」
トントン、
「♪」
[どうしてもって聞かなかったZ]
「A…」
襖を軽くノックして、現れたのは斎藤とA。
嬉しそうに走ってきたAを
抱き留めて沖田はその髪を手に取った。
「まだ乾かしてねぇのかィ?」
[ドライヤーはここにあるZ]
「…?」
「A、俺たちゃちと忙しい、わかるか?」
「…」
嫌嫌、とでも言うように首を振って
ドライヤーを沖田に押し付けるA。
土方はため息をついた。
一応注意はしたが、そもそも土方にも
Aを止めるという気は更々ない。
「よし、じゃあ座りなせェ」
「♪」
満足そうに頷いて沖田の前に座る。
それを膝へと持ち上げてから
沖田はドライヤーのスイッチを入れた。
言わずもがな、会議は一時中断。
温風にあてられ、半目になるのも可愛くて
ついやり過ぎてしまうのだが、
先日も前髪を逆立てて怒られたばかりなので
今日は早く乾かすに留めた。
仕上げに手櫛で整え、軽く撫でて終了。
「♪」
ありがとー、と頭を下げたAを
抱き寄せようとするもスルリと避けられる。
そのまま部屋を横断したAが
座蒲団を引っ張り、空いている1角、
近藤の向かいに腰を下ろした。
複雑そうな表情をする三人に、
任せとけ、と言わんばかりに胸を叩くA。
「A、無理はしねェでくだせぇよ?」
「もう夜も遅い、やるならやっちまおう」
「そうだな、じゃあすまないがAちゃん、
よろしく頼む。トシ、明日」
「分かってる。総悟、サボるなよ」
「へいへい…」
「_♪」
ニコニコしているAは何も言わない。
楽しそうに、時折考える様子を見せながら
広げられた地図に赤い印をつけていく。
最後に、昼間に折った紙を目を瞑って
その地図の上に放り投げる。
本人は着地点を確認することもなく、
そのまま船を漕ぎはじめてしまった。
対称的に残された三人は険しい表情。
「…とりあえずAを運んできまさァ」
それでもAのことが1番だった。
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年3月2日 23時