閑話:クリスマス ページ41
真選組。
赤い服に白い髭、丸いお腹に優しい眼差し。
肩に担ぐ大きな袋には幸せが沢山詰まっている。
HO-HO-HO!、と水が出来そうな笑いを残して夜空の向こう、テレビの奥へと去っていく。
お爺さん_サンタクロースを見詰めていたAはほぅ、と息を吐いた。
十二月。
ちらほらと初雪が観測され始めた冬の季節。
冷え込んできても屯所の朝は変わらない。
風邪を引くからと可愛らしいちゃんちゃんこを着込んで、更に一足先に食堂で暖をとっている。
美味しそうな味噌汁の匂いと、足音を抑えず駆け込んでくる青年にAは情報番組から目を離して微笑む。
真っ先に隣に座った沖田が手を伸ばしてくる。
「Aー、暖めてくだせェ」
「!」
抱き締められて触れあった鼻が冷たい。
隙間から入り込んでくる手が服の上から冷気を伝えてきて体が強張る。
それでも、耳元で安心したような吐息を拾ってしまい拒む事が出来ない。
「あぁ…あったけェ」
「♪」
くすぐったさに身をよじれば、沖田もまた楽しそうに笑う。
「なぁにイチャついてんだ、テメェ」
突然反転する世界と、青筋を浮かべた強面の男に遮られるまで。
「危ねぇですぜィ、土方さん。Aの可愛い顔に傷が付いたら俺が貰うしかなくなるだろィ」
「安心しろ。Aに傷をつけるような奴に嫁にやる気はねぇよ」
白煙を吐いた土方が目を細めてAに朝の挨拶をしようと口を開き_
「_何見て…あぁ、もうそんな季節か」
先程見ていた広告の別バージョン。
茶色い毛に立派な角の動物が首に鈴を着け、軽やかに橇を引いて空を駆ける。
綺麗に包装されたプレゼントの山を前に、"良い子"が跳び跳ねて喜んでいる。
また情報番組に切り替わったことを切っ掛けに、Aは自分を抱き締めていた沖田を振り返る。
その期待の込もった目に、沖田は天井を仰いで鼻を押さえた。
「おねだりとか…可愛いすぎだろィ…」
寒さに赤くなった頬と鼻、食い入るように見詰めていた目は潤み、唇は震えてながら白い息を吐く。
極め付きは胸に当てられた小さな手で、心臓の跳ねる音がそのままAに伝わってやいないかと心配になる。
返された沈黙に不安になったAが土方に視線を移す。
「…"良い子"にしてりゃ来る。とっとと朝飯食っちまえ」
「♪」
Aを挟んで沖田の反対側に座った土方に両手を広げられて、Aは嬉々としてその膝に座りに行く。
武骨な大きい手に頭を撫でられて、野菜に箸を伸ばした。
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年3月2日 23時