笑って少女22 ページ30
真選組。
「鬼であることは流石に知っていたか」
「最初は通り名だろうと流してたんだがな。
実際にその力を見せられて、思い知った」
そうか、とやや目を伏せた桂が息を吐いた。
「総悟と同い年かと思ってたが…」
「俺たちと同じぐらいだろうな、
つまり…やめておこう、
女性の年齢は詮索するものではないからな」
「…年上?」
ポツリと呟いたのは沖田、
混乱しているのか、頭が追いつかないのか、
言葉を発したことにすら気づいてないらしい。
土方も少なからず衝撃は受けたようだった。
背も小さかったし、何より無垢な笑顔は
大人の警戒心を易々と解いてしまう、
もしかしたら俺たちよりも、とまで考えた桂は
頭を微かに振ってその考えを放棄した。
重要なのは、そこではない。
「Aもあまり話さなかったが、
実際に見たのなら話がはやい。恐らく、鬼とは
夜兎と同等もしくはそれ以上の戦闘力を持ち、
薬学にある程度知識がある。だが…」
恐らく、というのは憶測でしかないからだ。
自分は鬼なのだ、と言ったAの顔は
なんだか寂しそうで気まずそうで、すぐに
笑ってみせたがあまり聞くことが出来なかった。
そもそも鬼は兎以上に数が少ない、
噂で聞いたことがあれば良いほうなのだ。
「だが、類い稀なるその力を全力で発揮すると
体が持たず、"反動"を受ける。その大きさに
よって"弱体化"、回復のために"幼児化"し、
また大きすぎると最悪、」
その命を落とす、とAは
へらへらと笑いながらそう言っていた。
「"あの状態"はいつから続いている?
真選組に女隊士がいるなどという噂はない、
話によれば記憶がないようだが…」
「力を使わせた。地方に少数で行った時を
狙われて、追いかけて罠にハマった部下を
助けようと飛び込んだ俺もしくじって…」
「総悟、アレはてめぇが気負うことじゃねぇ」
「相手にもよるが、
その程度では"反動"はそう大きくないはずだ」
Aの力がどの程度なのかも定かでない。
ただ1つ言えるのは、戦場を1つ
駆け回るぐらいなら"反動"は大きくないこと、
つまり幼児化する理由にはならない。
「"祝福"を使ったのだな」
無言は肯定と取るぞ、と桂が続けた。
Aのつくる薬は、よく効く。
なぜなら_
「己の命を吹き込むからですよ」
「っ」
「誰だ!」
襖を背にして、若い男が一人。
「初めまして。
Aが兄、
深々と頭を下げ、男はにこやかに微笑む。
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年3月2日 23時