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笑って少女16 ページ22

真選組。


今頃彼らは何処にいるのだろう、と
Aは黙ったままお菓子を置いた。

食堂で一人、周りにお菓子を並べてみたものの、
何故だか食欲は無くどれもそそらない。

行儀が悪い、と叱られるに違いないが、
そのまま後ろに倒れる形で寝転がる。

袋の開いた菓子から漏れ出す甘い匂いを
目一杯に吸い込んで吐き出した。


「………」


斎藤の所へ行こうか、と考えてから
Aは目を閉じて首を振る。

今は、彼は此処にいない。


沖田が出掛ける直前、Aが
見送りに出た玄関で聞いた会話を思い出す。


『相手は女性数名を人質に立て籠っていて、
捕らえた輩の3割ほどが女だったことから
攘夷を目論む新手の犯罪組織ではないかと_』

「…」


違う、とAは眉をひそめた。

捕らえられた男女は少なくともこの事件が
終わるまでは真選組の預かりになるらしい。

物陰から拘置所に容れられるのを見て、
Aは冷静に分析していた。

緊張で意図せず強張った顔を沖田に見られ、
慌てて浮かべた笑みは強がりと思われたらしい。

すぐに戻る、と女性なら一撃で陥落の
甘過ぎる微笑みを残されたのは
この幼いAでも眼福であった、

というのは関係ないので置いておこう、と
Aは頭を振って思考回路を戻す。


「……」


立ち上がったAはやる気だった。

少しでも、力になるために
必要になるのかもしれないのなら。

やがて迎えに来るであろう彼らに、
最大限の礼節を払わなければならない。

近づく別れに何の未練もない。

いつでもいいように
準備していた部屋は綺麗に片付いている。

姿見に映る少女はなんとも情けなかった。


『このままじゃ笑われてしまうよ』

「……」


自分が1番笑えるのだ、とAは
鏡の中の少女に天使を思わせる微笑みを向ける。

鏡の中の少女も、同じ笑みを返してきた。


廊下に突如現れた気配。

わざとであろうコツンと響いた音に
Aは不思議そうな顔をその人物に向けた。


「Aちゃんで合ってるね?」

「コクコク」

「隊長に言われて迎えに来たんだ、
一緒に来てくれないか?」


不安そうな表情を見せたAに
その人物は慌てた様子で付け足す。


「新しいお菓子も貰ってきたんだ、
行く道中で一緒に食べていかないか?」

「♪」


懐から取り出された菓子袋に
満面の笑みを浮かべるA。


数分後、Aは車に揺られていた。

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年3月2日 23時

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