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迷宮解読8 ページ9




少し不機嫌そうな、照れ臭そうな。

時折思い出すように口許を弛めては引き締め、また難しい顔をする。

「美味しい」

「気に入って貰えた?」

鏡花ちゃんは目をきらきらと輝かせて菓子を頬張る。

成る程、乱歩も気に入る訳だ。

「Aにしては珍しい手土産じゃないか」

「流石は与謝野ちゃん。実は選んで貰ったの」

遇には良いかもと趣味が反対そうな彼に聞いたら快く案内して呉れたのだ。

高級洋菓子店が出す庶民向けのお菓子の詰め合わせ。

有れば食べるが私なら選ばない、先ず候補にも上がらない品々は見ているだけでも楽しい綺麗なお菓子たち。

「乱歩」

いつまでひとつ目を食べているつもりなのだ。

ぼんやりと口を動かす乱歩にはきっと味なんて分かっていない。

「如何かしたのか」

「昼寝を妨げて連れてきたからでしょうか」

原因は分かっている。

「乱歩」

私は容易に動けないから乱歩に来てもらうしかない。

とうに空になっている袋を捨てさせて、新しく握らせるのは乱歩の好みの砂糖菓子。

「一人で出来て偉かったね」

ご褒美の甘いお菓子をどうぞ。

片付けたお菓子だって好きだろうけど、福沢さんたちと食べる方がもっと好きでしょう。

「…当たり前だろう。僕は名探偵なんだからな!」

「今度は乱歩が好きな店に行こうね」

名探偵か如何かは全く関係ないのだけど、乱歩だから其れで良い。

すっかり調子を戻した乱歩は私の隣を陣取りぱくぱくとお菓子を食べ始める。

其の様子を見ながら私も一口食べ進めると上品な甘さが口のなかに広がった。

美味しいけれど、きっと。

福沢さんと視線が一瞬交わりほどける。

大丈夫ですよ。

乱歩の好みではないから夕御飯が入る程度できっと止まります。

そしたらきっと。

「ねーA。お腹空いた」

「福沢さん、お夕飯は何にしましょうか」

「そうだな。久し振りにはんばーぐは如何だろうか」

「承りました」

乱歩が腑抜けているうちに下準備も済ませてある。

帰る頃にはご飯が丁度炊けるだろう。

袖を引かれて視線を横に。

私に垂れ掛かるハンチング帽。

「面倒だって言ってたのに」

拗ねたような声、けれど本当は拗ねてない。

だって分かっていたから。

「でも食べたくてお菓子を止めたでしょう?」

「野菜食べないと食べさせて呉れないだろ」

「野菜は残して良いのに」

「…食べたら褒めて呉れる?」

返答が分かっているのに不安そうに揺れる瞳。

「其れは勿論」

愛しい人は褒めて伸ばす。

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にゃーちゃん - 初コメ失礼します!超面白いです!思わず一気読みしちゃいました!更新楽しみにしてます! (2022年2月6日 2時) (レス) @page47 id: 04c952a5b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2021年5月16日 19時

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