冷たい溺愛カップル【江戸川乱歩】 (ページ34)

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交差世界の迷宮解読3 ページ34

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[駄々っ子]

異能力を含む奇々怪々の類いは専門外でお断り。

なのにまた何故私が呼ばれたのか。

其の原因は小学生低学年程度の姿まで縮んだ乱歩に有る。

「A、抱っこ」

「重たいから嫌」

見もせずにばさりと切り捨てると目の前の敦くんの方がぎょっとした顔をする。

次に取る行動は分かっているから湯呑みを置いた。

案の定、長椅子に飛び乗って私に全体重を掛けてくる。

「嫌だ！抱っこ！」

「無理よ」

「此の前冷蔵庫をひとりで持ち上げてたの知ってるんだからな！」

「ちゃんと中身は出したもの。福沢さんに危ないから二度とひとりでやるなって言われてるし」

前半は恐ろしい勢いで此方を見てきた太宰さんに向けてだ。

私のようなか弱い女に冷蔵庫がひょいひょい持ち上がって堪るか。

与謝野ちゃんだけ納得しているのも腑に落ちない。

「犯人の異能力で子供の姿になっているんでしょう。太宰さんの得意分野じゃない」

「Aさんが見たがるかと思いまして」

「いえ別に」

「小さい僕だぞ！い、いつもより可愛い、だろ…」

後半は私だけに聞こえる声量だったが太宰さんには唇の動きで伝わっていそうだ。

によによと云う表現が似合う笑みを浮かべている。

自分で言っておいて恥ずかしくなったらしい乱歩は私の表情をちらちらと窺っている。

「私に見せたかったの？」

「だ、だって…」

普段から態とらしいまでに子供っぽい言動を取っている乱歩だが、姿が追い付くとより言動もより其れらしくなるらしい。

半泣きの美少年が私に縋っていて、若しかしなくとも犯罪の香りが漂っているのではないか。

「帰ってきてから全く僕に構って呉れないだろ」

潤んだ翡翠に浮かぶのは不安。

「良い子にしてたのに…僕の事、」

其の先は許さない。

片腕を引けば易々と体が此方へ倒れてくる。

膝の上に横抱きにし、驚愕に目を開いている其の顔を覗き込む。

肉付きの悪い細い腕、折れそうな腰、柔らかそうな首筋。

喉を鳴らすと乱歩が怯えたように体を揺らす。

嫌だなぁ、何もしないよ此処では。

「良いよ。食事も着替えも、お風呂も一緒に入ろう」

そして最後に。

「私の愛しい人が望むなら…満足するまで抱いてあげようね」

みるみる赤く染まっていく乱歩の頬。

握ったままの指先に口付けを落とす。

「ま、子供には手を出さないけれど」

「＿っ」

ほら、賢い名探偵なら解っただろう。

夜が楽しみだね、乱歩。