迷宮解読16 ページ17
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車椅子の私を送迎する為に残っていた国木田さんだったが、乱歩の一声で結局全員を乗せて帰る事になった。
車内で私も探偵社にも顔を出して行く流れになる。
探偵社に着く頃には恐らく終業の時間だから丁度良い。
「こんにちは」
私の姿を見た反応は様々だった。
「おやA。いらっしゃい」
与謝野ちゃんは嬉しそうに。
「治ったんですか! おめでとうございます!」
賢治くんは純粋に。
「車椅子じゃない」
鏡花ちゃんは不思議そうに。
「た、立ってる…」
「いらっしゃいませですわAさん!」
谷崎くんは敦くんと同じ反応をして、ナオミちゃんは嬉しそうにお茶の準備をして呉れる。
「A、立ったのか」
「はい、立ちました」
福沢さんは淡々と事実の確認をしてきたので私も返答する。
数歩歩いてきて、私とかなりの距離を残して立ち止まる。
今流行りの社会的距離とか云う奴だろうか。
変わらず視線は私に注がれている。
何だろう。
「其の、挨拶が未だだろう」
「…え」
おずおずと福沢さんが両腕を広げる。
まるで私を誘うように。
確かに車椅子だったから出来なかったね、なんて言っている場合じゃない。
此の美丈夫に抱き締められるなんて、しかも今大勢がいる前で。
「は、恥ずかしいのですが、」
「駄目だろうか」
「そ、そう云う訳では」
乱歩も大概だが、私だって福沢さんの事が大好きなのだ。
褒めてやると言われれば鬼の首ぐらい取ってこようとさえ思う。
「ふ、福沢さん」
頬が熱い。
心臓が煩い。
此れは間違いなく重症だ。
「A」
来てくれないのか、と寂しそうに名前を呼ばれたらもう。
一歩踏み出せば其処からは早い。
吸い寄せられるようにとん、と胸の中へ。
私が贈った着物は形も匂いもすっかり福沢さんの物になっている。
潰さないようにと恐る恐る背中に回される手は大きくて暖かい。
落ち着く。
安心する。
「ただいま、戻りました。福沢さん」
「嗚呼。お帰り、A」
そっと見上げれば銀髪の隙間から優しい瞳が覗いている。
見られている。
美しく強い此の人に。
あぁ、素敵。
「だ_」
「社長ばっかり狡い!」
背後からの突撃。
慌てて腕を広げた福沢さんの中へ乱歩も入ってくる。
ぺりと引き剥がされて私の手は乱歩の腰へ。
苦しいぐらいにぎゅうぎゅうと抱き締められ、其の上から福沢さんに包まれる。
「A、言って」
「…愛してるよ、乱歩」
大好きです、福沢さん。
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にゃーちゃん - 初コメ失礼します!超面白いです!思わず一気読みしちゃいました!更新楽しみにしてます! (2022年2月6日 2時) (レス) @page47 id: 04c952a5b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2021年5月16日 19時