6/19太宰さん誕生日記念閑話2 ページ6
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「私は予定がありますので此処で」
久し振りの外での仕事を終えた。
ビルの近くまで帰ってきて、Aは態々挨拶をしてから背を向けて遠ざかっていく。
今日はなんだか手元がよく狂った。
咄嗟に異能力で何とかしたものの、着地で踏み外して体勢が崩れかけたことにAは気付いていたに違いない。
Aが間違えて持っていたと謝りながら渡してきた書類も、俺が忘れて置いていったものだった。
空のカップを気付かずに口に運べば、今度は熱いのを冷まし忘れた。
今日はなんだか調子が悪い。
思い当たる節が、今。
「………」
鍵が開いている。
「…太宰」
「ちゅうやぁ、おかえりぃー」
勝手に抉じ開けられて入られた怒り云々よりも、珍しく赤ら顔で酒に酔った姿に瞠目してしまう。
そして目に入る、秘蔵のワインボトル…
「おい」
「あれぇ？ Aは一緒じゃァないのかい？」
Aは仕事が終わったら直ぐに帰る。
残業に付き合うことはあっても、自分から残業することはなくどれだけ中途半端でも帰る。
引き篭っていたい等と溢す彼奴は、今日は寄り道をしている。
「仕事部屋も隣で、セーフハウスも隣。んふふ、付き合ってるの？」
「アァ？ 選ばれなかった探偵社が何の用だ」
真夜中に人の家で勝手に酔っ払っている。
何の罠だ。
「罠なんて仕掛けてないよ？ 寧ろ私が仕掛けられてるのかも、なんてね」
「気味が悪ぃ」
にこにこと上機嫌で余計不気味だ。
悪態を突いても太宰の様子は変わらない。
「私だって気分はさいあくだよ？ 愛しいひとに逢いに来たら住所詐欺に遭ってね」
「詐欺だァ？」
「隣だからってちゅうやの部屋に招かれるのは御免だよねえ」
呂律の回らない口調は何処か自嘲気味に聞こえる。
「つか……愛しい人？」
「Aから聞いてなぁいのぉ？」
此の男、性格は屑だが顔は整っている。
数多の女を虜にしてきただろう妖艶な笑みに、男である俺もあてられそうになって腹が立つ。
「ま、教えてあげないけど」
「巫山戯ンな。死ね」
「んふふ。なに、気になるの」
「とっとと出てけ。其のワインも開けたンなら持ってけ」
「珍しい。ちゅうやが私に？ 毒でも」
「入ってねェのは手前が分かってンだろ」
抵抗する気はないようで、背中を蹴り出してやればすんなりと外へ出た。
「覚えてたの？」
「知るか。二度と来ンな」
何が悲しくて青鯖を祝わなきゃならねェ。
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檸檬 - とっても面白いですね！つい一気読みしちゃいました。更新楽しみにしてます！ (2020年12月27日 23時) (
レス) id: b134bf3ec5 (このIDを非表示/違反報告)
青い夕日 - 好きです。頑張ってください！ (2020年7月2日 21時) (レス) id: e84367e7a0 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - コメント失礼します。 とっても素敵な作品ですね！！ 今、一気読みしてきました！ 更新頑張ってください！！！ (2020年6月20日 13時) (レス) id: b682e16ecf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梦夜深伽 | 作成日時：2020年6月17日 15時
