第48話 ページ3
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ゴン、と響いた重い音に、芥川くんがぎょっとした様子で目を開く。
「……中原さん？」
「未だ酒が残っているだけでしょう。芥川くん、次の制圧任務は了解しました。わざわざありがとう」
書類に一枚、名刺を挟んで返す。
「最近人気なんですって。少し遠いけれど、季節のタルトが絶品だって」
今は確か＿、と続く言葉に彼の顔が僅かに煌めく。
此の笑顔を樋口ちゃんが見てなくて良かった。
卒倒して使い物にならなくなる。
「男女で行くと果物が1.5倍になるそうよ」
芥川くんは不思議そうな顔をしたけれど、其れ以上は言わない私に、説明を求めるのは諦めたらしい。
「…ありがとう、ございます」
「此方こそ。書類を届けてくれてありがとう」
本来ならば私が取りに行く予定だった。
殺気立った中也が恐ろしかったのか、随分とはやく出来上がった書類を芥川くんが持ってきてくれたのだ。
「マフィアが行列に並べると思ってンのか」
復活した中也が、見送って帰ってきた私にそう声を掛けてくる。
羞恥に沈んでも会話は聞いていたらしい。
「既に手配済みです。名刺の通りに裏口から行けば受け取るのみになっています」
「脅したか」
「物騒ですね」
「マフィアだからな」
「勉強になります」
仰々しく頭を下げた私が説明する気はないと伝わったらしい。
怪訝そうな表情を、明らかに小さくなった書類の山に向けた。
「手前、ちゃんと寝たンだろうな」
「此の部屋で寝たほうが良かったでしょうか」
「…」
「…寝る前に、整理をしたまでです。大半は終えられていましたので、朝一で各担当部署へ届けて参りました」
そんなに睨まなくなって良いじゃないか。
はぐらかした私は降参するように両手をあげる。
「最近、御自身が殺気を撒き散らかしていたことはお気付きでしょう。今の書類だって、本来は数日後に上がってくるものでした」
中也は言わないが、仕事が増えた理由は私にある。
国も恐れる凶悪マフィアの五代幹部の一人に突如として補佐が付いた。
其れも、何処の馬の骨とも分からぬ若い女。
興味を持たない方がおかしい。
「私は、マフィア幹部であらせられる貴方の補佐ですから」
手が黒く染まることも、放った弾丸が命を散らすことも、此のよく回る赤い舌で全てを欺こう。
「はっ、手前も物騒じゃねェか」
「お褒めに預かり光栄です」
追加の書類は、此方に山のようにありますよ。
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檸檬 - とっても面白いですね！つい一気読みしちゃいました。更新楽しみにしてます！ (2020年12月27日 23時) (
レス) id: b134bf3ec5 (このIDを非表示/違反報告)
青い夕日 - 好きです。頑張ってください！ (2020年7月2日 21時) (レス) id: e84367e7a0 (このIDを非表示/違反報告)
はるか - コメント失礼します。 とっても素敵な作品ですね！！ 今、一気読みしてきました！ 更新頑張ってください！！！ (2020年6月20日 13時) (レス) id: b682e16ecf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梦夜深伽 | 作成日時：2020年6月17日 15時
