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第25話 ページ26





皆に背中を見詰められながら、扉に声を掛ける。

「乱歩さん?」

「……何」

扉越しなので声がよく聞こえない。

「乱歩さん、出てきてください」

気配が遠退いた。

ペタペタと微かに足音が聞こえて、何も聞こえなくなる。

《鍵がかかっているのは嘘》

カチャン、と軽い音をさせて扉を開けた。

強行突破だ。

最早振り返らずに部屋のなかへと足を踏み入れる。

備品室なのか、薄暗く段ボールが幾つも積まれている。

その間に壁を背にして蹲るように彼はいた。

傍らには封の空いていないラムネの瓶が置いてある。

「乱歩」

「!」

ガバッと勢いよく顔が上がった。

期待するような瞳が、私を捉えた瞬間にまた不満そうに細められる。

「私はA、珀羅橋(はくらばし)A」

「知ってるよ。僕のことは忘れてる」

「私が此の世界の人でないことも?」

「其れぐらい最初に会ったときに分かってる」

僕は名探偵なんだぞ、と駄々を捏ねるように言ってまた顔を伏せてしまった。

「私は一月程前、爆発後の瓦礫の山の上で倒れているところをマフィアに見付けられた」

「分かってる」

「私は……」

探し物、見つけたい物。

伸ばした手で、柔らかな癖ッ毛に触れた。

「此の世界に来るのは、二回目なんだね?」

ゆるゆると彼は頭をもたげる。

ああ、そんな泣きそうな顔をしないでよ。

「乱歩さん、私を助けて呉れませんか」

「…見つけてどうするの」

探し物、見つけたい物。

「見つけて……」

どうしたい?

そも、何を探しているのかも分からない。

「Aは、もう帰れないんだよ?」

「!」

心臓をぎゅっと掴まれるような感覚だった。

鼓動が早く、血液を流せと音を鳴らす。

分かってたよ、帰れないって。

探し物、見つけたい物。

こういう予感は当たるんだから。

探し物、見つけたい物。

思いの外ショックだった?

探し物、見つけたい物。

違う、何か思い出せそうな、何か、何か。

「_ぅわっ」

正面からタックルを受けた。

備品室の床に転がり、犯人はまたぐりぐりと頭を押し付けて離れない。

「A」

「重い…乱歩さん、離れて」

「乱歩。乱歩って呼んで!」

頬を膨らませて、上目で見てくる。

恐らくは成人男性だがまるで幼子のよう。

「…乱歩」

「何」

「乱歩さん」

「……」

「乱歩」

「何」

向こうからの視線に気づいてますか。

三度目はそう遠くない気がしています。

諦めた私を、彼は嬉しそうに見ていた。

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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時

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