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第11話 ページ12





「中也、一日も働かなくて大丈夫なの?」

異能力があるんだから包丁如きじゃ大した騒ぎにならねェよ、と言われてそれもそうかと思い直した私。

デパートをあれだこれだと連れ回して、街を見渡せるビルの一角にある喫茶店で休憩をしていた。

「まるで俺が働いてねェみたいな言い種だな」

「でもマフィアの幹部サマが働かなくていいってのは平和ってことか」

「話聞けよ」

「聞いてるよ」

今日の彼は表情がコロコロと変わる。

彼自身も久し振りの休暇だと言っていたが、貴重な休暇を私に当てて良いものかと甚だ疑問だ。

「で、手前の欲しい物はそれで全部か?」

「化粧品、文房具、手帳、裁縫道具」

「裁縫までするとはな」

「大したものは作れないけど、あると便利」

化粧は腕が落ちていないといいな、と溢すと驚愕された。

店員さんには素肌が綺麗だからと色々勧められたが、結局最低限の物しか買っていない。

前の職場でハニトラする時に使っていた化粧品も見掛けたが、必要なさそうなので止めた。

「あともうひとつ、あるんだけど」

前の世界の方が技術は進んでいたが、並んでいる商品に大した差はなかった。

欲しいものも昔からあった筈だからきっとあるだろう。

「和菓子屋さんに行って良いかな」

出来れば老舗の、と続けると、彼は頼もしく頷く。

「商店街に行きゃある。昔からあるからな、手前の好きそうな和物が結構見つかると思うぜ」

「それは楽しみ」

運ばれてきたケーキにフォークを差す。

口の中に甘さがいっぱいに広がった。

「美味しい」

きっと、探し物も見つかるだろう。

上機嫌で食べ進めていると、頬杖をついて此方を眺めていた彼の表情が歪んだ。

それはもう、端整な顔が嫌悪感を露にして歪んだ。

その視線は私の後方に向けられていて、目の動きから段々と近付いてきているのが分かる。

「最ッ悪だ」

「それは此方の台詞だよ」

視界に砂色の外套が映った。

見上げる顔は頭上高く、長身痩躯の男性は玩具を見付けたような笑みを浮かべている。

包帯だらけの手がポケットから出てくるのを見ていると、漸く私の存在に気付いたようだった。

「呉や? 此れは此れは…」

「相手にすンなよ、此奴は頭がおかしいんだ」

「中也ね、君、連れの彼女に向かって頭がおかしいだなんてよくそんな酷いことが言えるね」

「手前の事を言ってンだよクソ太宰ぃ!」

ダンっとテーブルが揺れる。

飲み物を持ち上げといて良かった。

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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時

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