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第9話 中原side ページ10





「あれからA君はどうかな」

「逃げ出す素振りも何も、外と連絡を取る気配もありません」

「そうだろうね」

全ての報告があがっている首領は楽しそうに笑う。

「聞けば芥川君まで手懐けたそうじゃないか」

「奴の淹れた茶が気に入ったようで」

「それだけではなさそうだよ」

ヒラヒラと片手で摘まんでいるのは先日の報告書。

「規模は大したことないが、目的の物を回収する速度は史上最速と言って良い」

微かに血と火薬の匂いを纏わせた奴が、部屋の前に立っていたことを思い出す。

帰ってきたと聞き、そろそろ部屋に戻ってくるかと扉を開けたところで丁度鉢合わせた。

「逃げる機会は幾らでもあったのにね」

だが、帰ってきた。

帰ってきて飄々と、また仕事を始めた。

「良い拾い物をした」

にっこりと笑う首領に深々と頭を下げる。

「彼女には、時間があるときに此処に来るように伝えておいてくれるかな」

「はい、必ず」

伝えたら直ぐに来るんだろうな、とそんなことを考えてしまった。


「中原さん、お疲れ様です」

「…ああ」

「火急の用でなければ少々お待ち頂けますか」

(やつがれ)が負けるなど有り得ぬっ」

「うぉっと」

俺の姿を認めて目の前に降り立った奴は、早口で告げて再び消えた。

立っていた場所を芥川の『羅生門』が抉る。

「残り時間あと一分でーす!」

「おい樋口、何してる」

「梶井が新しい爆弾を作っての」

先輩がんばれーっと鉢巻きをして両手で旗を振っている樋口の代わりに、茶を啜っていた姐さんが答えた。

「何やら形が崩れたとかで小さな照明弾になっての。作り過ぎたと連日打ち上げる故、こうしてゲヱムの的にしたのよ」

ほれ、と扇子の指す方には空を駆ける奴の姿。

芥川の『羅生門』が生み出す黒獣に乗って器用に飛び回っている。

「最後じゃ、『金色夜叉』」

照明弾を撒いているのは姐さんの異能力らしい。

箱から直接ばらまかれたそれを、黒獣の(アギト)が、奴の銃とナイフがあっという間に爆発させていく。

連門・(アギト)で数がある分、芥川が有利かと思ったがそうでもないらしい。

照明弾に接近する(アギト)に乗って近距離はナイフで、遠距離は銃でと器用に当てていく。

「…楽しそうじゃねェか」

笑っている。

まるで軽業師のようにくるくると回っている。

「愛いのぅ」

姐さんが扇子を手に仰いだ。

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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時

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