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「……太宰君に異能力は無効化されます。

『曽根崎心中』の影響はないはずでしょう」


「あの異能力って、

『好きな人と刺し違える』能力なんだよねえ」


怪訝な顔をした安吾が考え込む。


「だから、無理心中(・・・・)の類いなのよ」


彼の望む死に方ではない。


例え死なないとは云え、

あの男が信念を曲げてやるだろうか。


「まさか本当に記憶喪失なんですか」


「安吾は会ったんでしょう?」


直接会っても、真意を覗かせない彼のことだ。


余裕綽々な笑みなんて浮かべて

記憶喪失は演技だと思われたのかもしれない。


そういえば探偵社の皆も半信半疑だった。


分かって(・・・・)いたのは乱歩だけ。


「治の刻から、私だけ消したのよね」


「それは…」


「能力のひとつ、思い出したみたいなの」


『恋椿姫』、『不知火』、『女郎蜘蛛』、そして。


刻を操る__『四季刻歌』。


「能力だけれど異能ではない、私の力」


「報告されていませんが」


「今したじゃない」


「思い出したときにするべきです」


「あの女と会ったときにふわっと浮かんだの。


完璧に思い出したのはついさっきよ」


「詳細を把握しないまま使ったんですか」


「あの、どういうことですか坂口先輩」


ちらと窺うような視線に首を振った。


組合(ギルド)戦の報告書で、

異能力無効化が効かなかった能力を覚えてますね」


「『旧支配者(グレート・オールドワン)』ですか?」


「凄い……よく覚えてたね」


素で驚くと美人は曖昧に微笑む。


「最近勉強のためにと叩き込まれて…」


涼しい顔をしている上司は眼鏡をかけ直しただけ。


「話しても善いですか?」


「最初から私に否やはないでしょう」


こんな場所まで連れてきて

会わせるぐらいだから期待の新人だろう。


どちらにせよ私からは話せないため、唇を結ぶ。


「Aさんの正式な能力名は

『九十九物語』ではありません」


「え……報告書ではそう書いてあった…」


「異能力ではないため太宰君の『人間失格』も、

ましてやお札なんて何の効果もありません」


「なんで……虚偽の報告だったんですか?」


困惑の表情が私に向けられる。


安吾が素知らぬ振りなんてしてくるから、

仕方なく口を開いた。


「そんなこと、私は一言も言ってない」


「貴女のそういうところが問題なんです」


それは自分がよく分かってるよ。

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6月の飴玉 - 様々な視点で描かれているので、とても新鮮でおもしろいです!! (2020年5月18日 12時) (レス) id: 913e8668f8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2019年7月9日 16時

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