笑顔の裏の悲しさ ページ14
この空気をどうにかしようとしている彼の優しさが感じられる。
そうだよね。そういえば私たちお互いの名前を知らない
「えと。Aって言います。」
そう言ってからふと思った。
え。でも彼、私の名前知ってたよね。
「あの。」
「ん？」
彼は笑顔でこちらを向いた。彼の笑顔は柔らかかった。
「でも私の名前知ってましたよね？」
「あー。えっとー。それはー。」
彼は顔を曇らせた。そして笑った。この前の…あの悲しそうな笑顔で。
「うーん。なんとなく？」
「え。なんとなく？」
「いや、そんな気がしたから？」
「そんな気がした…？」
「えっと。ね。とにかくさ。Aちゃんね。よろしく！」
「え。あ。よろしくお願いします。」
話は曖昧なまま終わったけど彼にとっても私にとっても今は曖昧なままな方がいいんだ。なんとなくそんな感じがした。だから彼にこれ以上聞かなかった。いや聞けなかった。彼が悲しそうな顔で笑うから。
「あ。えっと。名前。なんて言うんですか？」
この空気を早く変えたくて私は彼に話しかけた。
彼はびっくりしたような顔をした後やはり悲しそうな笑顔でこう言った。
「僕？えと、じゅん。って言います。」
彼…じゅんさんはやっぱり悲しそうな顔をしたあと笑ってこう言った。
「そういえば僕ら名前知らなかったんだよね？すごいよね！元はと言えば僕から話しかけたんだけど…。」
そういえば本当にそうだ。私達は名前も知らなかった。でも今こうして逢えている。
「めぐりあわせ。」
「ん？」
思わずそう呟いていた。
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私とじゅんさんが逢えたのは運命なんかじゃなくてめぐりあわせ。神様が私達を引き合わせてくれたの。
それはある意味運命だけど偶然なんかじゃなくて。なんていうか…逢うべき人に巡り会えたって感じ。
「めぐりあわせ、か…。Aちゃんってロマンティストなの？」
そう言ってじゅんさんは笑った。
「うーん。ロマンティストではないと思う。」
でも、たしかゆりにも言われた気がする。私、ロマンティストなのかなぁ。
「あはは。Aちゃん面白い」
何が面白いのかわかんないけどじゅんさんが笑うから私も笑った。
じゅんさんの笑う顔は本当に綺麗だった。
あ、っと言ってじゅんさんは何か思い出したような顔をして私の方を見た。
私もじゅんさんを見つめる。
「そういえばAちゃんって何歳？」
急に聞かれてびっくりした私は一瞬答えに戸惑った。
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作者名：じゅな | 作成日時：2019年1月29日 1時
