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尚哉side
木曜四限、『現代民俗学講座I』。清和大学の人気教授、高槻彰良の講義だ。風邪と中耳炎を併発した時以外この授業を休んだことがない俺は今日もちゃんと出席していた。
…でも、さっきからズキズキとお腹が痛み、思わず机に伏せる。原因は分かっている。生理痛だ。何万人かに1人しかいない生理男子。俺はそのうちの1人なのだが、先生もそうだと分かったのはつい数ヶ月前のことだった。
「深町?お前が寝るなんて珍しいな。」
「寝てない…。」
「あ、じゃあ体調悪い?大丈夫?」
「大丈夫…講義に集中してて。」
薬飲んだのにまるで効いていない。こんなに酷いのは久々で。ようやく少しだけ痛みが治まって顔を上げると、先生とパッと目が合った。すぐに目を逸らされたけど、やっぱり気付いていたか。後で謝ろう。
やがて講義が終わって、やたらと心配してくる難波を軽くあしらいながらゆっくり資料などを片付ける。
「深町くん。」
「あ、先生…ごめんなさい、途中講義聞けてなくて。」
「良いんだよ。難波くんもありがとう。深町くんは僕が引き取るよ。」
「じゃ、お大事に!」
この後予定があるのか、走って去っていった難波。引き止めちゃったかな、悪かったな。
「深町くん、体調悪いなら研究室で休んでから帰る?」
「…お言葉に甘えても良いですか。」
どうせ家に帰っても1人だし、先生になら頼れるから。そんなことを考えながら先生を見上げると、先生は大きく頷いてこう続けた。
「もちろんだよ!歩ける?おんぶしてあげよっか?」
「いつも逆の立場じゃないですか。何度意識を失った先生を運んだことか…。歩けますから、大丈夫です。」
確かに立ち上がった時少しふらついたけど、それはいつものことだ。通い慣れた研究室への道を歩く。途中でトイレに寄ることも忘れない。
「コーヒーを出したいところだけど、カフェインが入ってるからやめておこうか。アレでしょ?」
「…はい、そうです。」
ソファに座るように言われ、腰を下ろす。体を温めた方がいいから、と白湯を入れてくれた。
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作者名:sunny | 作成日時:2022年3月19日 23時