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卵を3個くらい割って、昔ながらの楕円形のオムライスを作る。これ、意外と形にするの難しいんだよね。アルバイト始まる前に何度か家で練習したのも今ではいい思い出。



「はい、できましたよ。ケチャップはお好みでお願いしますね」
「ん、ありがと」



私と常連さん、裏に叔父さんの三人しかいないので、私も少し休憩させてもらう。なんだか甘いものを飲みたい気分だったので、冷たいロイヤルミルクティーでも飲もうかな。



「お味の方はいかかですか」
「今日も超美味い、Aちゃんほんと料理上手いよね。びっくりする」



にこりと、眼鏡越しに目が合う。どくりと高鳴るこの気持ちには、蓋をしなければいけないことくらいわかっているのに。私は店員、向こうは客なんだ。ただ、それだけ。それだけの関係。それ以上は、求めちゃいけないのに。



…ちょっと待って、あれ、この声どこかで聞いた気がする。



「ごめんなさい、もう一回名前呼んでもらってもいいですか」
「Aちゃん?」



昨日の有岡さんと、目の前の常連さんの私の名前を呼ぶトーンが似ていて思わず目眩がする。ねぇこれほんとに現実?



「もしかして、私、昨日お会いしました…?」
「あ、ようやく気づいてくれた?」



楽しそうな、いたずらっ子のような笑顔は、昨日のものと全く同じで。こんなにわかりやすかったのに、なんで気づかなかったんだろう。



「昨日は大変失礼な態度を…!ごめんなさい」
「気にしないでいいよ、俺もいきなり話しかけちゃったりしてごめんね?」



こうやって上目遣いで謝る姿はやっぱりトイプードルに似ている。いつもの常連さんが昨日の、アイドルの有岡さんという事実。…まって、私有岡さんに恋をしているということ?ますますこの気持ちには蓋をしなければならないのでは。



「昨日の音楽番組見ました。みんな、本物の王子様みたいで、とっても素敵でした」
「褒めてもなにも出ないよ?」
「…耳赤くなってますよ」
「あは、バレた?」



バレバレです、と呟く。バレバレなのは私の好意の方じゃないのか。有岡さんにも、周りの人達にも、私の気持ちがバレませんように。この先も、私がアルバイトを辞めるまではこの距離のままでいさせてください。



太陽みたいな有岡さんの笑顔に、鼓動が早まるのを実感してしまって。バレるのは時間の問題かもなんて、早々に諦めちゃったりする。

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作者名:ちくわ。 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pipipi__dream  
作成日時:2015年6月1日 0時

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