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パーク入口付近のお土産屋さんがこれでもか!というくらい混んでいて。クリスマスツリーを撮る人、まだ帰りたくなくて談笑している人、色んな人達でごった返している。
人の波に飲まれて為す術もなく。予想していない角度からの衝撃に、がくりと体が傾く。
「大丈夫?」
「はい、なんとか」
そっと有岡さんの手を取る。ぬいぐるみのおかげで怪我もなく済んだみたい。
「有岡さん、もう手離してもらって大丈夫ですよ」
「まだ、繋いでちゃだめ?やだ?」
「嫌ではないですけど、」
やっぱりトイプードルみたい。高鳴る私の心拍数とは反対に、こんなタイミングで誰かにバレたらどうしようって不安になってる私がいるのも事実で。
パークのゲートを抜ければ、じわじわと現実が迫ってくる。いつの間にか繋いでいた手もほどかれていて。終わりが近づいているんだなと今更実感した。
「夜遅いし送ってくよ」
「大丈夫です、電車ですぐなので」
「またつけられたりしたらどうすんの」
「それは…」
私だってもうこれ以上有岡さんに迷惑も心配もかけたくないのに。駅から少し離れた住宅街まで移動して、タクシーで帰ることに。
静かな車内は程よく暖かくて、軽く睡魔が襲ってくる。こくこく船を漕いでいると、ぐいっと肩を抱かれた。
びくりと反射的に体を離せば、肩使っていいよという許可。こんなに距離近くていいんだろうか、不快じゃないかな、なんて気持ちがぐるぐるするけれど、どう足掻いても睡魔には勝てなくて。
ファンの皆さんごめんなさい、と心の中で小さく呟いて、有岡さんの肩を借りて眠りについた。
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作者名:ちくわ。 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pipipi__dream
作成日時:2015年6月1日 0時